小型組み込み機器向けLinux ──MMUを持たないマイクロプロセッサで動作するしくみ
機器設計者への配慮
多くの設計者やメーカにとって,製品コストは,設計,市場規模,特許,サポートなどのさまざまな要素に振り分けられます.各要素に関わる開発コストやその他の固有のコストが設計の方向性に影響しています.
こうしたコスト面での課題については,プロトタイプの設計に取りかかる前に,組み込みシステム設計者によって検討されることが理想的です.しかし現実には,明確な方針が決まる前に設計に取りかからざるをえないことも多いものです.こうした場合,設計者は,ライセンスを受けた商用OS,または自社開発のOSの利用を想定して作業を行うことになります.
ハードウェア設計者はまた,商品化までの時間を考慮して決断を下さなければならないため,難問に直面することになります.例えば,現時点で利用可能で,かつ安価なCPUを用いて設計するか,もしくはさらに良い性能のCPUが出てくるのを待つかといった問題です.
米国Atmel社,米国Cirrus Logic社,米国Motorola社,米国NetSilicon社,韓国Samsung社などのARMライセンシは,現在入手可能で,多機能かつ比較的安価なCPUを提供しています.そのほか,例えばMotorola社は,DragonBall系のマイクロコントローラを用いて,ページャ(いわゆるポケベル)やPDA市場で実績のある安価な組み込み製品を提供しています.同じように,米国Intel社のi960も,産業用制御機器やPCIバス,I2Oバス,レーザ・プリンタなどの分野で広く利用されています.
ARM,PowerPC,i960,DragonBall,BLACKfin,ColdFireなどへの考慮とは別に,OSを選択する場合,MMUを持つプロセッサと持たないプロセッサの両方について考える必要があります.現時点で,これらすべての組み込みマイクロコントローラに対して,LinuxベースのOSが対応しています.これまでのOSに代わってLinuxを採用することは容易です.
筆者らは「次世代PDAに採用されるCPUの方向が見えつつあるなかで,選択すべきOSはLinuxか,それともそのほかのOSか?」という問いに対して,Linuxが従来のOSに取って代わるというのは,すでに自明のことと考えています.