Visorが備えるSpringboard拡張スロットのアーキテクチャ

　米国Handspring社のPDA「Visor」は，拡張スロットにモジュールを装着することによって，新しい機能を追加できる．ここでは拡張用モジュールのアーキテクチャを紹介する．また，ソフトウェアや筐体を開発する際に注意するべき項目について解説する．なお，米国Xilinx社，Handspring社，米国Portable Design誌は，この拡張モジュールを対象とした設計コンテストを開催する．　　（編集部）

　ハンドヘルド・コンピュータの「Visor」や「Visor Deluxe」はSpringboardと呼ぶ拡張スロットを備えています．この拡張スロットを利用すると，ハンドヘルド本体のハードウェアの機能をプラグ・アンド・プレイで拡張できます．Springboardを利用すれば，周辺機器メーカにはさまざまな製品を開発するチャンスが生まれます．すでに多数のSpringboardモジュールが設計され，市場に出回っています．

●三つの特徴を備える拡張スロット

　Springboardスロットは，ユーザの経験を視野に入れて開発されました．ハードウェア・アクセサリを追加したいと思うユーザは，簡単にモジュールをプラグインして使用できます．追加のソフトウェアを読み込んだり，複雑なドライバをインストールする必要はありません．Springboardモジュールは，いつでも（たとえコンピュータを使用している最中でも）装着や取り外しが可能です．システムがクラッシュしたり，ユーザのほうがシステムに歩み寄る必要はありません．

　Springboard拡張スロットには，おもに次の三つの特徴があります．

●プラグ・アンド・プレイ

　Springboardモジュールを使用するときに必要となるソフトウェアは，すべて，モジュール自体に組み込まれています．モジュールを装着すると同時に，必要なすべてのソフトウェアが自動的に立ち上がります．

●柔軟な電源管理

　Springboardスロットは，電源を内蔵していないモジュールに対して電力を供給します．充電クレードルを併用すれば，充電機能を備えるモジュールに電力を供給することもできます．また，このスロットのソフトウェア/ハードウェア・アーキテクチャを利用すると，それを使用しないときに低消費電力モードに入るようなモジュールを開発することも可能です．

●開放型のスロット

　スロットの背面方向および上方向は開放型になっているため，さまざまなサイズのモジュールを開発することができます．このように選択の幅の広い構造を採用しているので，物理的な制約にとらわれることなく，バッテリやアンテナ，イヤホン，電話用ジャック，その他の部品を組み込むことができます．

　Handspring社は，スロットのプラグ・アンド・プレイ機能を実現するため，Palm OSの拡張版を開発しました．これによって，モジュールの装着を検知したり，モジュール上で直接アプリケーションやドライバを実行したり，モジュールを取り外したときにソフトウェアを完全に削除することが可能となっています．

　モジュール・メモリ内に常駐するアプリケーション・ソフトウェアは，通常はモジュール内部で実行されます．そして，一般に，ハンドヘルド本体内部のROMやRAMで実行されるアプリケーションと同じように動作します．こうした構成を採ることにより，OSはアプリケーションを内部メモリにコピーしてから実行するのではなく，プログラム・コードに直接アクセスすることができます．また，アプリケーションによる内部RAMの使用量が最小限に抑えられ，貴重なメモリ・リソースを有効に利用できます．Springboard拡張スロットの場合，CPUのメモリ領域にモジュールをマップすることによって，上述のアーキテクチャを実現し，内部メモリやモジュール・メモリへのアクセスの一貫性を保っています．モジュールを取り外すと自動的にモジュール・アプリケーションが終了し，起動画面（Application Launcher）に戻ります．