Visorが備えるSpringboard拡張スロットのアーキテクチャ
●ソフト開発環境はGNU ToolsとCodeWarrior
Visor用ソフトウェアの開発者にもっとも広く使用されているプログラミング言語はC言語です.プログラミング・ツールとしてもっとも普及しているのは,無償のHandspring Palm OS GNU Toolsと有償のMetro- werks CodeWarrior for Palm OS Toolsです.前者のGNU Toolsは経済的でありながら,パワフルな環境です.とくにUnix環境に慣れているソフトウェア開発者に適しています.後者のCodeWarriorでは,インターフェースの設計に便利なツールが提供されます.これは,他のプラットホーム用ソフトウェアの開発にCodeWarriorを使用したことのあるエンジニアにとって,親しみやすい環境です.Handspring Palm OS GNU ToolsはWindowsプラットホームでしか使用できませんが,CodeWarriorはMacintoshでもその他のパソコンでも使用できます.
今日のデスクトップ・パソコンと比較すると,Palm OS搭載のハンドヘルド本体は処理能力の点で劣っています.Visor Deluxeは16.58MHz動作のDragonBall EZプロセッサ(Motorola社製)を搭載しています.一方,Visor PrismとVisor Platinumは33MHz動作のDragonBall VZプロセッサを搭載しています.モジュールのハードウェアを開発する際には,こうした点を考慮に入れる必要があります.一般に,Visor Deluxeの処理能力は1MIPS程度です.ハンドヘルド本体が提供する処理能力よりも高い性能が必要な場合,モジュールにDSP(ディジタル信号処理用プロセッサ)を組み込むことも可能です.
複雑な数値演算処理をリアルタイムに行う必要がない場合には,Visorをデータ収集デバイスまたはデータ入力デバイスと割り切り,複雑な計算処理をデスクトップ・パソコンに任せるという方法もあります.ユーザはVisorでデータを収集し,HotSync,Palm OSコンジット,アプリケーションに最適化した専用のファイル転送プログラムを使用して,このデータをデスクトップ・パソコンに転送します.そして,デスクトップ・パソコンによって複雑な計算が実行され,結果はHotSyncでハンドヘルド本体に返されるか,またはコンピュータ上に表示できるファイル内に返されます.