電動車両技術と自動運転技術が創る2020年代のクルマ社会 ―― 東京モーターショー2013

福田 昭

tag: 組み込み

レポート 2013年11月25日

●トヨタ:バイクのような挙動をする小型3輪電気自動車

 トヨタ自動車はまた,3輪電気自動車のコンセプト・モデル「TOYOTA i-ROAD」を出品した(写真8).「TOYOTA i-ROAD」は前輪として左右2輪,後輪として1輪の車輪を備えており,前輪が上下に位置を変えて車体を傾けることで曲がる.2輪車(バイク)に近い,独特の動きをする.座席は運転席と,その後ろに1名乗りの後部座席がある.

 

写真8 3輪電気自動車のコンセプト・モデル「TOYOTA i-ROAD」

 

 

 「TOYOTA i-ROAD」の寸法は全長2,350mm×全幅870mm×全高1,445mmである.全幅が短い,すなわち,幅が狭い.この点でも2輪車に近い.ホイール・ベースは1,700mm.最小回転半径は3.0mと短い.重量は300kgと,大排気量の2輪車並みに軽い.バッテリはリチウムイオン電池.航続距離(1充電当たりの走行距離)は50km(時速30kmの一定速度走行による目標値)で,それほど長くはない.最高時速は60km(日本)あるいは45km(欧州)で,法規制によって最高速度が制限されている.


●ホンダ:体重移動で操作する超小型電動車両

 本田技研工業は,座って腰掛けた状態で体重を移動させて操作する超小型電動車両「UNI-CUB β(ユニカブ ベータ)」を参考出品した(写真9).

 

写真9 座って腰掛けた状態で体重を移動させて操作する超小型電動車両「UNI-CUB β(ユニカブ ベータ)」

 

 

 「UNI-CUB β」は,電気モータで動く車輪を取り付けた"いす"のような構造をしている.運転者が座って身体を傾けると,車両がその方向に移動する.傾ける角度を変えることで,速度を調整できる.最高速度は時速6kmで,成人が急いで歩く速度と同じくらいである.展示ブースでのデモンストレーションを見る限りでは非常にゆっくりと動いており,実使用で最高速度になることはあまりないようだ.

 「UNI-CUB β」の寸法は全長510mm×全幅315mm×全高620mm.重量は25kg.航続距離は6km(時速4kmの走行で約1.5時間)である.バッテリはリチウムイオン電池.

 「UNI-CUB β」のデモンストレーション走行で興味深かったのは,向きを変えることなく全方位に移動することだ.例えば真横にスルスルと動く.このような動きはあまり見たことがない.キャタピラを装着した車両は全方位に移動できるが,一度は向きを変える必要がある.向きを変えずに横方向や斜め方向に動くというのは,水中生物(例えばイカ)のようで,とても新しい.


●日産:デザインの自由度を生かした電動スポーツ

 日産自動車は,スポーツタイプの電気自動車のコンセプト・モデル「Blade Glider(ブレード・グライダー)」を出品した(写真10).電気自動車は内燃機関の自動車に比べると,車体レイアウトやボディ・デザインなどの自由度が高い.その利点を生かし,ガソリン自動車のスポーツ・タイプとはかなり異なるデザインになっている.

 

写真10 スポーツ・タイプの電気自動車のコンセプト・モデル「Blade Glider(ブレード・グライダー)」

 

 

 「Blade Glider」のボディは先端が尖(とが)っており,前2輪の幅(フロント・トレッド)が狭い.そして後部が広がっており,後2輪の幅(リア・トレッド)が広い.そして後2輪の間にリチウムイオン電池や電気モータなどを配置しており,リアタイヤに荷重が強く加わるようになっている.フロントとリアの重量配分は30対70である.座席は前1名(運転者のみ),後2名のスリー・シーターであり,これも独特の座席レイアウトである(写真11写真12).

 

写真11 「Blade Glider」を斜め上,前方から俯瞰したところ(日産自動車が報道関係者向けに提供した資料から)

 

 

写真12 「Blade Glider」のドアが開いたところ(日産自動車が報道関係者向けに提供した資料から)

 

 

●日産:2020年の実用化を目指す自動運転技術

 日産自動車はまた,二次電池駆動の乗用電気自動車「リーフ」をベースにした自動運転技術の開発車両を展示した(写真13).同社は2020年までに複数の車種で自動運転技術を実用化することを,2013年8月28日に発表している.

 

写真13 乗用電気自動車「リーフ」をベースにした自動運転技術の開発車両

 

 

 開発車両では,レーダやカメラなどによって周囲の状況を把握し,人工知能によって状況を判断し,ハンドルやブレーキなどを制御する.車両の周囲すべての方位を監視するアラウンド・ビュー・モニタ用カメラやレーザ・スキャナ,人工知能を組み込んだコンピュータなどを搭載した.高速道路の走行時には,走行レーンを維持する,走行レーンを変更する,障害物を回避するといった機能を備える.

 

●スバル:安全運転支援システム「EyeSight」が第3世代に進化

 富士重工業は,第3世代の安全運転支援システム「EyeSight(ver.3)(アイサイト・バージョン3)」を搭載した乗用車「LEVORG(レヴォーグ)」を参考出品した(写真14).「LEVORG」は排気量が1.6リットル級および2.0リットル級のツーリング・ワゴンで,2014年1月に先行予約の受け付けを開始し,2014年春に発売する予定である.「LEVORG」の寸法は全長4,690mm×全幅1,780mm×全高1,485mm,ホイールベース2,650mm.

 

写真14 第3世代の安全運転支援システム「EyeSight(ver.3)」を搭載した乗用車「LEVORG(レヴォーグ)」

 

 

 「LEVORG」が搭載する「EyeSight(ver.3)」(写真15)は,「プリクラッシュ・ブレーキ」や「クルーズ・コントロール(全車速追従機能付き)」などの機能で構成される.プリクラッシュ・ブレーキは前方の障害物を検知して自動的にブレーキをかける機能で,2008年に実用化された初代の「EyeSight(アイサイト)」から搭載されており,「EyeSight」を広く知らしめる原動力となった機能でもある.

 

写真15 「EyeSight(ver.3)」の要素技術である前方監視用ステレオ・カメラ
バック・ミラーのすぐ上に取り付けてある.

 

 

 初代の「EyeSight」で搭載したプリクラッシュ・ブレーキは,ブレーキはかけるものの完全に停止はせず,運転者が車両を完全に停止させていた.2010年に登場した第2世代の「EyeSight(ver.2)」では,相手との相対速度差が時速30km以下で走行中に衝突の可能性が高いとシステムが判断すると,自動的にブレーキをかけ,場合によっては完全に停止するように,システムが改良された.そして第3世代の「EyeSight(ver.3)」では,相対速度差を時速50km以下に向上したほか,カメラの視野角と視認距離を約40%拡大した.

 クルーズ・コントロール(全車速追従機能付き)は,自動車専用道路や高速自動車道路などで前方車両との車間距離を保ちながら,走行速度を自動的に変化させるシステムである.停止から時速100kmまでの広い車速域で前方車両に追従できる.第3世代ではカメラの認識範囲を広げることで,前方車両の車速変化に対する応答性を高めた.またカメラを第2世代までの白黒認識カメラから,カラー認識カメラに変更したことで,前方車両のブレーキ・ランプの点灯を認識し,減速動作を早めに実施できるようになった.

 第3世代の「EyeSight(ver.3)」では新機能として,時速65km以上で走行中に,走行車線両側の白線を認識して車線中央の位置を維持するとともに,走行車線からの逸脱を防ぐ「アクティブ・レーン・キープ」機能や,後退時にアクセルの急な踏み込みを検知して,警報を発するとともにエンジン出力を制限する「AT誤後進抑制制御」機能などを搭載した.

 

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