ディジタル技術が電源制御やモータ制御を変えていく ―― TECHNO-FRONTIER 2013
2013年7月17日~19日,エレクトロニクスとメカトロニクスに関する展示会「TECHNO-FRONTIER 2013」が東京ビッグサイト(東京都江東区)にて開催された(写真1).出展社数は480社,出展小間数は1,011小間で,前回(2012年)の463社,983小間を上回った.来場者数は2万8,080名(速報値).前回の2万9,245名には,わずかに届かなかった.
「TECHNO-FRONTIER」は,電源技術やモータ技術,バッテリ技術,ノイズ対策技術,環境発電技術,設計支援技術,熱設計技術などをテーマとする複数の展示会で構成される.テーマが一つの分野に絞られておらず,どのような展示会かを一言で説明することは簡単ではない.
このため,過去のレポートでも毎年,取り上げるテーマが大きく異なってきた.2010年のレポートは環境発電技術の展示コーナを,2011年のレポートは非接触給電技術の展示コーナを主に紹介した.前回(2012年)のレポートでは,自動車エレクトロニクスを主要なテーマに据えた.
今回(2013年)のTECHNO-FRONTIERでも,環境発電や非接触給電,自動車エレクトロニクスなどの展示は少なからず見受けられた.ただし,本レポートの主要なテーマとして取り上げるほどの新しい動きやうねりは見出せなかった.一方で,本質的な部分で技術の塗り替えが進んでいるとの印象を受けた.
●不揮発性メモリ内蔵の電源管理ICに異常発生ログを格納
電源技術やモータ技術,バッテリ技術,ノイズ対策技術,環境発電技術などは本来,アナログ技術である.最近は,これらのアナログ技術とディジタル技術を組み合わせることで,電源技術やモータ技術などのアナログ技術を別の次元に引き上げようとする動きが盛んになっている.ディジタル技術は大規模化,高速化,低消費電力化などの進化が急速に進んだ.ディジタル技術を取り込むことで,ディジタル技術の発展の恩恵に預かれる.今回のTECHNO-FRONTIERでは,このような動きが目を引いた.
特に興味深かったのが,リニアテクノロジーが出展していた不揮発性メモリ(EEPROM)を内蔵する電源システム管理(リニアテクノロジーは「パワーシステムマネジメント」と呼称)ICである.電源(例えばDC-DCコンバータ)と負荷の間で電圧や電流などを常に監視しており,異常が発生すると電源の供給を停止する.
展示ブースでは,2チャネル(チャネル0とチャネル1)の電源出力を制御および監視し,来場者がボタン(赤い押しボタン)を押すことで1チャネル(チャネル0)の負荷(電子負荷)を短絡し,短絡異常を検知した電源システム管理IC(「LTC3880」)がチャネル0の電源出力を停止するというデモンストレーションを見せていた(写真2,写真3).電圧出力と電流出力の波形を4チャネル入力のディジタル・オシロスコープでリアルタイム表示しており,電源からの供給を停止することでチャネル0の電圧出力と電流出力がゼロになる様子が分かりやすく示されていた(写真4).
ここで重要なのは,異常発生のログが電源システム管理ICのEEPROMに格納されることである.EEPROMに格納されたデータは,電源を切っても消えない.このため,異常発生後に時間が経過しても,ログを読み出すことで異常発生の内容を解析できる.
展示ブースでは,EEPROMを内蔵する電源システム管理ICの代表製品として,「LTC2977」と「LTC3880」,「LTM4676」を挙げていた(写真5).「LTC2977」は多チャネルの電源監視用途に向けた製品である.8チャネルの電源を監視し,制御する.DC-DCコンバータは外付けになる.「LTC3880」はチャネル数は少ないものの,部品点数や実装面積などを節約したいユーザ向けとなっている.2チャネルのDC-DCコンバータ制御回路を内蔵しており,2チャネルの電源を監視する.MOSFETとインダクタは外付けになる.「LTM4676」は小型化をさらに進めた製品である.MOSFETとインダクタを含めたモジュールで,2チャネルの電源出力と電源監視を実行する.
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