歴史的に初めて時速100kmを達成した伝説のEV「ジャメ・コンタント」を再現 ―― 日本EVクラブがキット化,組み立てセミナを開催
●夕闇のなか走る「ジャメ・コンタント・オマージュII」
組み立てはいよいよ最終段階に入ってきた.作業が一足先に進んでいた1台が,パワー系を念入りにチェックしたのちOKが出た.パワー系が収まるシャーシ上部にステンレス・パネルで蓋をして,その上に木製の座席を取り付けた.さらにチェックして試走のGOサインが出た.ジャメ号を工場前の駐車場まで押すことになった(写真19).
写真19 いざ試走に.工場の駐車場に運ぶ
この日いた参加者もみんな作業を中断して,駐車場に集まった.日没後しばらく経ったので暗くなっていた.
最初に運転席に座ったのは,設計者の水嶋氏である.みんなが注目する中,「スイッチONします」といってメイン・スイッチが入れられた.といっても,エンジンが掛かるわけではないので音も何も変化はない.
次にライト類のスイッチが入れられた.実用的な明るいライトだ.そして間もなく,ジャメ号は音も立てずにすーっと動いた.重そうな車体なのに,加速しながら駐車場の端まで行って右折して視界から消えた(写真20,写真21).安定した走りだ.
しばらくして再び姿を現し,軽快に戻ってきた.
写真20 暗くなった駐車場で軽快に走りゆくジャメ・コンタント・オマージュII
写真21 完成したジャメ・コンタントIIと設計担当の水嶋氏(左),吉野氏
本写真は後日撮影.
水嶋氏に続き,この日の受講者全員が次々に試乗運転した.受講者に混じって筆者も試乗させてもらった.加速は悪くない.アクセル・ペダルに対する反応はすごくいい.エンジン車はエンジンの回転数に比例してトルクが出るが,モータは電流に比例するので,反応が速いのだろう.といって,それほど速すぎる速度にもならないし,街乗りとしても実用になるのではないかと思った.
それにしても,このクルマは楽しい.自分で作ったわけではないのに,そう思う.クルマの基本的要素すべてが,見通せるからだろう.また,自分で組み立てるキットなので,ていねいに作ればそう仕上がるし,いい加減に作れば(?)それなりにしか仕上がらない,というところがおもしろいのかもしれない.そして,エレキに強い人はメカがよく分かるし,メカが強い人はエレキが理解できるようになると思う.
ふと気付くと,工場裏の西の空に富士山の真っ黒い大きな影が薄闇の中に浮かんでいた.今日中に組み立て作業がすべて終わるのか,ちょっと心配になった.
日本EVクラブはこの組み立てセミナを計4回実施したという.