電気自動車が住宅まわりの電力インフラの一部に ―― 人とくるまのテクノロジー展(自動車技術展)2012

福田 昭

tag: 組み込み 電子回路

レポート 2012年5月30日

 自動車技術に関する総合展示会「人とくるまのテクノロジー展(自動車技術展)2012」が5月23日~25日にパシフィコ横浜(横浜市・みなとみらい)で開催された(写真1).同展示会は1992年より毎年初夏に開催されており,今回で21回目となる.出展者数は436社,出展小間数は914小間で,過去最大の出展者数となった.来場者数(速報ベース)は7万1,785名で,前年実績の5万2,308名を大きく上回った.

 

 

 写真1 人とくるまのテクノロジー展2012の横断幕

 

 

  自動車が抱える課題が「環境」と「安全」であることは,今年も変わらない.電気自動車やハイブリッド自動車などの環境に配慮した展示が,今年も注目を浴びていた.

 

 

●電気自動車のバッテリから住宅に電力を供給

 電気自動車の販売を業界に先駆けて始めたのは,日産自動車三菱自動車工業である.日産は専用設計の電気乗用車「LEAF(リーフ)」を,三菱は軽自動車ベースの電気自動車「iMiEV(アイミーブ)」を市販している.

 その日産は,電気自動車「LEAF」を住宅の電力源とする利用方法を提案していた.LEAFが搭載しているリチウム(Li)イオン・バッテリは24kWhの容量があり,これは一般家庭の2日分の使用電力量に相当する.リチウムイオン・バッテリの出力は直流なので,そのままでは家庭用電化機器に使えない.そこで「PCS(パワー・コントロール・システム)」と呼ぶ電力変換器を介して200Vの単相交流電力に変換している(写真2写真3).展示ブースにはLEAFの実車が置いてあり,LEAFのリチウムイオン・バッテリによって展示ブースの照明灯と内照壁の電力をまかなってみせていた(写真4).

 

写真2 LEAFとPCSを接続したところ

※ 以下の写真は,それぞれマウスでクリックすると拡大できます

 

写真3 LEAFとPCSによって住宅の電気機器に電力を供給するイメージ

PCSの主な仕様は定格出力6kW,正弦波PWM制御,単相3線式200V出力である.

 

写真4 日産ブースの壁面にあった説明


 

 

 なおLEAFの外形寸法は全長4,445mm×全幅1,770mm×全高1,545mm.車両重量は1,520kg.乗車定員は5名である.最高速度は145km/h,航続距離は200km(JC08モード).リチウムイオン・バッテリのエネルギー容量は24kWh.駆動用モータは交流同期モータで,出力は80kW,トルクは280Nmである.充電時間は200Vの交流電源で8時間.

 

 

●電気自動車ベースのプラグイン・ハイブリッド車を展示

 三菱自動車工業は,電気自動車「iMiEV」をベースとするプラグイン・ハイブリッド車のシステムを展示していた.床下中央に大容量バッテリを配置し,フロントとリアの両方に駆動用電気モータとインバータを載せた4輪駆動のハイブリッド車である(写真5).ガソリン・エンジンと発電機(ジェネレータ)はフロントに配置した.電気モータによる走行を基本としており,低速・軽負荷では電気モータで走行する.このときガソリン・エンジンは停止している.中速・中負荷ではガソリン・エンジンでバッテリを充電しながら,電気モーターで走行する.ガソリン・エンジンは駆動力とはならない.高速・高負荷ではガソリン・エンジンがバッテリの充電と駆動力の両方を兼ねる(写真6).

 

写真5 電気自動車をベースとするプラグイン・ハイブリッド車のシステム構成


 

写真6 速度・負荷と走行モードの違い

 

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