EV（電気自動車）チームのピットを探せ！ ―― 第9回 全日本 学生フォーミュラ大会（1）

コラム　全日本 学生フォーミュラ大会とは

　全日本 学生フォーミュラ大会とは，学生が参加する自動車競技会の一つである．フォーミュラには「規格」の意味があり，フォーミュラ・カーは車競技の安全性の観点から，車両ごとの個体差を少なくするために，規則（レギュレーション）が細かく決められている．基本的に，フォーミュラ・カーは，オープン・ホイール形式（つまり四つのタイヤがボディの外側に完全に出ている）の競技車を指す．規則により，いろいろなレースがあるが，F1レースは，フォーミュラ・カー競技の世界最高位といえる．

　全日本 学生フォーミュラ大会は，1981年から行われている米国SAE（Society of Automotive Engineers）主催の学生フォーミュラ大会（Formula SAE）の規則をベースに，2003年より，自動車技術会（日本の自動車技術の学会）主催で毎年静岡にて開催されている．なお，同様の大会が世界12カ国で開催されている．

　対象は，大学，大学校，高専などである．エントリ・チーム数は，第1回には17校（チーム）だったがその後増え続け，今年は87校だった．アジア・オセアニア地域を中心に海外からの参加校も増えている．

●趣旨＆基本方針

　大会趣旨には，以下のように書かれている．
「主役である学生が自ら構想・設計・製作した車両により，ものづくりの総合力を競い，産学官民で支援して，自動車技術ならびに産業の発展・振興に資する人材を育成します．」

　また，

• 最大610ccまでの4サイクル・エンジンを搭載する1人乗りフォーミュラ・カー
• 年間1000台を生産すると想定してビジネス・モデルを用意する
• 企画，設計，製作，走行まで，一環評価

によって審査され，順位が決まる．

●審査手順

　参加者は，まず「車検」を受け，合否の判定を受ける．車検を通った車は，静的審査と動的審査を受け，合わせて1000点満点で点数付けされて順位が決まる．このフォーミュラ大会のメイン・イベントは，動的審査の中で行われるエンデュランス（耐久レース）であるが，そこで1位になったからといって総合1位になるとは限らないのである．

◆その1：車検
車検は，以下の四つの項目に分かれる．
（1）技術検査：車両の安全・設計要件の適合性の確認（ここの検査項目は多いが，すべてクリアしないと（2）以降に進めない）
（2）チルト：車両45°傾斜で燃料漏れがないか，ドライバ乗車で転倒しないかの確認
（3）騒音：所定の条件で排気音レベルの確認
（4）ブレーキ：4輪ブレーキ（ロックされるか）の確認

　（4）まですべてクリアしないと，動的審査に進めない．なおEVについては，（2）チルトと（3）騒音は省略されている．

◆その2：静的審査
静的審査は，実車を動かさない書類審査および口頭の審査であり，以下の三つの項目からなる．静的審査には，325点が配分されている．
（1）コスト（配点100）：1000台生産を仮定したコスト・テーブルを事前提出し，口頭試問により製造工程などの知識・理解度を評価する．
（2）プレゼンテーション（配点75）：「製造会社の役員に，設計上優れていることを確信させる」という仮想のシチュエーションのもとで審査する．
（3）デザイン（設計）（配点150）：事前提出の書類のもと，設計の適切さ，革新性，加工性，整備性，組立性などを口頭試問により審査する．

◆その3：動的審査
動的審査は，実車の走行によるテストであり，以下の五つの項目からなる．動的審査には，675点が配分されている．
（1）アクセラレーション（配点75）：直線75mの加速性能を競う．各チーム2名のドライバがそれぞれ2回，計4回走行して競う．
（2）スキッドパッド（配点50）：8の字コースによるコーナリング性能を，2名のドライバがそれぞれ2回，計4回走行して競う．
（3）オートクロス（配点150）：直線，ターン，スラローム，シケインなど，約800mの複合コースを1周走行する．
（4）エンデュランス（配点300）：直線，ターン，スラローム，シケインなどによる周回コースを約20km走行する（今回は約1kmのコースを20周走る）．ドライバ2名で走行し，中間点でドライバが交代する．
（5）燃費（配点100）：エンデュランス走行時の燃費消費量を評価する．

まの・もとき