EV(電気自動車)チームのピットを探せ! ―― 第9回 全日本 学生フォーミュラ大会(1)
2011年9月5日~9日,小笠山総合運動公園エコパ(静岡県袋井市)にて,「第9回 全日本 学生フォーミュラ大会」が開催された.全日本 学生フォーミュラ大会とは,学生が自ら車両を構想・設計・製作して,ものづくりの総合力を競う場であり,公益社団法人 自動車技術会が主催している(詳しくは稿末のコラムを参照).ここでは,大会に出場したEV(電気自動車)について,4回にわたってレポートする.
9月だというのに,この暑さといったら....筆者がの会場に到着したのは,大会2日目の昼だった.大会初日である昨日は大雨だったらしいが,今日はドピーカン,熱い陽射しが痛いくらいだ.会場のエコパは,掛川駅から車で十数分の緑深い丘の上にある.
大会本部のテントで受け付けをする.受け付け手続きの間,その後ろをフォーミュラ・カーが行き来する.ただ,そこではエンジンを掛けていないので,人手で押している(写真1).先導役1人,カーに乗っているドライバが1人,押す役が2人と決まっているらしい.少し離れたところから何台かの爆音(エンジン音)が聞こえる.
写真1 本部テントの後ろをフォーミュラ・カーが行き来する

今回の取材対象は「EV(電気自動車)」だ.この大会の主役はもちろんガソリン車で,書類審査の結果75チームが通過したと事前のメール・ニュースで流れていた.一方,EVは2013年度に正式カテゴリに加えられると予告されているものの,今年はデモ大会でしかない.が,6校がノミネートされている.大会初日は車検が行われる予定だったが,大雨のためEV部門の車検はキャンセルされ,2日目である本日から行うと事務局から発表されていた.
会場周辺は熱気が充満していた(写真2).本部受付で,EVチームのピットがどこかを尋ねると,プログラムの場内案内図の端っこを差して「今日はこの辺りに固まっているはずだ」という.「...はずだ」という言葉に何か少し不思議な涼しさを感じた.ガソリン車の各校のピットが集まっている場所とは反対方向だ.まずはそこへ行かなくては.
写真2 ガソリン車のピット群
受付付近からガソリン車のピット群を見る.でもEVは反対方向のようだ.
示された方向に歩いていくと,プラクティス(基本走行練習)コース,ブレーキ・テストの各会場の前を通リ過ぎる(写真3).どこもフォーミュラ・カーが何台も並んで順番を待っている.走行の順番になって初めてエンジンをかけるようで,数台のエンジン音が響いている.ガソリン車の排気量は610ccまでと決まっているようで,本当のフォーミュラ・カーの音とは比べものにならないが,それでもレース・カー独特のエンジン音が身体に心地良く響く.
写真3 プラクティス・コースに並ぶガソリン車
車検を通過した車が,次々とプラクティス(基本走行練習)コースに並ぶ.コースは2面ある.本番コース以外に,練習走行ができるのはここしかない(ちなみに右側2番のマシンは,今年総合優勝した上智大学のマシンである).
でも,目的地はここではない.「EVは音はしないんだよなぁ」と思いながらそこを通り過ぎると,突然人気(ひとけ)のない空間が広がった.この奥はもうないのかと思った瞬間,向こう側にテント群が見えた(写真4).かすかに看板に「EV」の字が見える.あそこか?
写真4 あそこか?
向こうに見えるのがEVチームのテント(ピット)群なのか?