スパコンからリモコンまで,最先端技術開発の成果が一堂に ―― CEATEC JAPAN 2011

福田 昭

●電源を切ってもデータを保持するメモリ

 ここからはデモンストレーションや実演などではなく,最先端の半導体・部品に関する展示をご紹介しよう.

 ラピスセミコンダクタ(2011年10月1日に,OKIセミコンダクタから社名を変更)は,強誘電体不揮発性RAM(FeRAM)を開発・製品化した(写真12).FeRAMはこれまでに米国Ramtron International社富士通セミコンダクターが製品化しており,ラピスセミコンダクタは3社目のFeRAMメーカとなる.

写真12 強誘電体不揮発性メモリ(FeRAM)とフラッシュメモリ,EEPROMの書き込み時間の違い
一定時間内に書き込めるデータの量を視覚化し,液晶パネルで表示していた.


 ラピスセミコンダクタが製品化したFeRAMは,シリアル・インタフェースの32K/64K/256Kbit品とパラレル・インタフェースの256Kbit品である.読み書き回数は10の12乗回,データ保持期間は10年を保証する.強誘電体技術はラピスセミコンダクタの親会社であるロームが開発してきた実績があり,この技術とラピスセミコンダクタのDRAM技術を融合させることでFeRAMを開発したと,展示ブースでは説明していた.

 そのロームは,強誘電体技術を不揮発性の論理素子やアナログ状態保持素子などに応用した事例を展示ブースでアピールしていた.バッファやフリップチップ,電子ボリュームなどのステータスを,電源を切っても保持できる.


●パワー・デバイスの特性をさらに改良

 次世代のパワー・デバイスでは,ロームがSiC(シリコン・カーバイド)化合物半導体材料を使ったSBD(ショットキ・バリア・ダイオード)とMOS FETを参考出品していた(写真13).SiCはSi(シリコン)に比べるとエネルギ・バンド・ギャップが広いことから,高温動作デバイスや高耐圧デバイスに適しているとされる(こちらの記事を参照).

写真13 SiC化合物半導体材料を使ったSBD(左手前)とMOS FET(右奥)


 展示ブースでは,トレンチ(溝形)技術によって特性を改良した次世代デバイスを出品していた.SBDはトレンチ技術によって順方向電圧降下を低減させた.10Aを通電したときの順方向電圧降下は従来品が1.5Vであったのに対し,開発品では1.2Vに下がっていた.

 MOS FETはトレンチ技術によってオン抵抗を小さくした.オン抵抗の値は平方センチ当たり1.0mΩ(600V品)である.従来品に比べるとオン抵抗は5分の1~10分の1と大幅に小さくなっている.


●電気二重層キャパシタを超える大容量コンデンサ

 コンデンサや抵抗器などの受動部品では,大容量化と小型化で話題があった.FDKNECトーキンはそれぞれ,電気二重層キャパシタを超えるエネルギ密度を有する次世代大容量キャパシタ「リチウムイオンキャパシタ」を出品していた.

 FDKは小型の電気自動車に2次電池の代わりにリチウムイオンキャパシタを搭載し,走行実験を実施した(写真14写真15).走行距離はリチウムイオン2次電池に比べるとはるかに短いものの,充電時間がきわめて短く,充放電サイクル回数がはるかに多いことから,走行距離の短い小型自動車(たとえばゴルフ場やリゾート地などのカート)に利用できる可能性がある.

写真14 リチウムイオンキャパシタで駆動する小型電気自動車


写真15 リチウムイオンキャパシタで駆動する電気自動車の走行実験概要


 NECトーキンは,リチウムイオンキャパシタの基本原理や性能などをパネル展示していた(写真16).リチウムイオンキャパシタの基本原理は,電気二重層キャパシタとリチウムイオン2次電池の融合に近い.正極材料には電気二重層キャパシタと同様に活性炭を使い,イオンを吸脱着させる.負極材料にはリチウムイオン電池と類似のカーボン材料(ただしリチウムイオンをドープ済み)を使い,リチウムイオンのドーピング/脱ドーピングを起こす.こうして電気二重層キャパシタよりも高いエネルギ密度を実現している.

写真16 リチウムイオンキャパシタの基本原理


 抵抗器では,ロームが外形寸法が0.3mm×0.15mmときわめて小さなチップ抵抗器を開発し,実物を出品していた(展示ブースでの撮影が禁じられたので,写真はない).これまで使われてきたチップ抵抗器の最小サイズは0.4mm×0.2mm(0402サイズ)であり,今回の開発品を使うと基板専有面積が44%ほど減少する.なお同社では「03015サイズ」と呼んでいた.チップマウンタといった基板実装用装置のベンダーの依頼があれば,評価用サンプルを出荷できる状態にあるという.


ふくだ・あきら

フリーランス・テクノロジ・ライタ
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