スパコンからリモコンまで,最先端技術開発の成果が一堂に ―― CEATEC JAPAN 2011

福田 昭

●映像が浮かんで見えるディスプレイ

 ディスプレイ技術でも面白い展示があった.スタンレー電気が,暗がりに映像が浮かんで見える不思議なディスプレイを試作し,実演していた.同社はこのディスプレイを「マイクロミラー方式実像表示装置」と呼んでいる.

 このディスプレイでは,板状の樹脂の上に映像が浮かんで見える.ただし浮かんで見えるのは両眼で見たときだけで,一眼でみると板状の樹脂の下に映像が沈んでしまう.またカメラは一眼なので,映像を撮影することはできなかった.

 ディスプレイの仕組みは以下のようなものだ.板状の樹脂に微小な鏡のアレイを作り込み,板状樹脂の下側に映した液晶ディスプレイの画像を微小な鏡のアレイで2回反射し,結像する(写真6).板状の樹脂にどのような方法で鏡のアレイを作り込んでいるかは,明らかにしなかった.樹脂内に急激な屈折率の変化を与えて光路を折り曲げるといった方法が考えられる.

写真6 空中に映像が浮かんで見えるディスプレイの原理図


●高温超電導体による磁気浮上と抵抗ゼロを実演

 材料技術では,フジクラは,高温超電導体による磁気浮上と抵抗ゼロを実験して見せていた.同社はイットリウム系の高温超電導体材料を使った線材を研究している(写真7).液体窒素冷却による磁気浮上実験は,「高温超電導ブーム」が起こった1990年前後には日本国内のあちこちでデモンストレーションされていた.筆者もその当時に磁気浮上の実験を何回も拝見した.しかし最近では,高温超電導体の実験を展示会や学会などで見ることはなくなっている.ブームが去った後も辛抱強く研究開発を継続してきた,フジクラならではの展示といえる.

写真7 イットリウム系の高温超電導体材料を使った線材


 高温超電導体による磁気浮上のデモンストレーションは,磁石を並べた楕円形の軌道上を,高温超電導体がわずかなすき間を残して浮上し,軌道に沿って滑るように移動するというもの(写真8).空気抵抗以外に移動を妨げる要素は原理的に存在しないことから,高温超電導体は速度をあまり落とさずに滑るように進む.抵抗ゼロのデモンストレーションは,高温超電導線材によるコイルを室温から液体窒素温度に冷やし,コイルの抵抗をゼロにすることで電子回路の電流が増え,小さな風車が回り出すというもの.いずれの実験も,来場者が熱心に見つめている姿が印象的だった.

写真8 超電導磁気浮上の実験デモンストレーション
磁石を並べた楕円形の軌道上を,高温超電導体がわずかなすき間を残して浮上し,軌道に沿って滑るように移動する.

 

 

●磁場共鳴方式のワイヤレス給電

 最近になって注目を浴びているワイヤレス給電技術でも実演があった.TDKは,磁場共鳴方式のワイヤレス給電技術を開発し,いくつかの試作品で給電を実演していた.磁場共鳴方式の給電技術には,距離が離れていても給電できる,位置がずれても伝送効率が低下しにくい,といった特徴がある(写真9).

写真9 磁場共鳴方式のワイヤレス給電技術


 展示ブースでは,オーディオ・ヘッドホンやミニカー走行模型などの試作品を展示し,実際に給電してみせていた.オーディオ・ヘッドホンは給電スタンドとヘッドフォンの両方をレイアウトした状態で展示していた(写真10).給電スタンドのコイルとヘッドフォンの耳当て部分のコイルが磁場共鳴することで,電力を伝送する.伝送した電力はリチウムポリマの2次電池に蓄える.ヘッドフォンはオーディオ信号も無線で受信するので,完全なコードレス・ヘッドフォンになっている.

写真10 磁場共鳴方式のワイヤレス給電を利用したコードレス・オーディオ・ヘッドホン


 ミニカー走行模型は,楕円形の走行トラックを小さなミニカーが走行するという展示で,直線部分の一部が給電区間となっていた(写真11).ミニカーが給電区間を走行する時間は1秒程度と短い.ミニカーのコイルが受電した電力は,内蔵のスーパキャパシタに蓄えられ,ミニカーのモータを駆動する電力となる.

写真11 磁場共鳴方式のワイヤレス給電を利用したミニカーの走行模型

 

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