スマートフォンでおなじみの静電容量式タッチ・センサを組み込みシステムに実装 ―― マイコンの周辺機能を利用すれば,追加コストは不要
Column 市販キットを利用したタッチ・センサ・アプリの開発
ここでは,市販の開発キットを利用した静電容量式タッチ・センサ・アプリケーションの開発方法を説明します.開発キットとして,米国Microchip Technology社の投影型静電容量式タッチ・スクリーン開発キット「mTouch Projected Capacitive Development Kit (DM160211)」を使用します.
この開発キットに含まれるプログラミング済みのファームウェアは,1×1~13×11のXY電極マトリックスを持つマルチタッチ・センサに対応しています(開発キットに含まれる開発ボードは,16×16の電極マトリックスまで対応).開発キットの詳細については,同社の「mTouch Sensing Solutions」のWebページを参照してください.日本語のユーザーズ・ガイドや,以下で説明するプログラムやドキュメント(英文)などが同社のWebサイトで公開されています.
さらに,Microchip社のPICマイコン向けのCソース・コードも公開されています.以下のところから,Cソース・コードのインストーラ(PCAP Technology Source v5)をダウンロードできます.静電容量式タッチ・センサの具体的なプログラムの処理に興味のある方は,ソース・コードを確認してください.
また,この開発キットはmicrochipDIRECTのWebサイトで購入できます.
●マルチタッチやジェスチャ入力のデモ・プログラムが付属
開発キットには,以下のものが含まれます(写真A-1).
- 投影型静電容量式タッチ・スクリーン開発ボード
- プログラミング済みのPIC16F707チップ(ボードに実装済み)
- センサ・ボード
- センサ(投影型静電容量式3.5インチ,12×9電極)
- プログラミング・アダプタ・ボード(Microchip社のMPLAB ICD 3を用いたプログラミングに使用)
- USBケーブル
開発ボードは,下記の要件を満たすパソコンに接続する必要があります.
- デュアルコア以上のCPU
- USBポート搭載
- OSはMicrosoft Windows XPまたはWindows 7
また,設定ユーティリティ(PLUU)ソフトウェアやデモ・プログラムも同社のWebサイトで公開されています.デモ・プログラムを使うと,タッチ・センサの以下の機能を評価できます.
- タッチ軌跡の描画(シングル・タッチ,マルチタッチ)
- ダイアル・キーパッド
- 画像ビューア
- ジェスチャ入力(ピンチ&スワイプ)
投影型静電容量式タッチ・センサの基本的な動作原理については,同社が公開しているドキュメント「mTouch Projected Capacitive Touch Screen Sensing Theory of Operation(英文)」で解説されています.
コア・ファームウェアの書き換えには以下のツールが必要です.
- PICkit 3開発プログラマ/デバッガ(#DV164121)
- Microchip社のMPLAB IDE,バージョン8.40以上
- HI-TECH C PRO Model 9.71a以上のコンパイラ
静電容量式タッチ・センサは,指がパネルに触れた際に発生するセンサ静電容量の増加を検出します.指のタッチに対するセンサの感度は,タッチ面積,電圧および電流レベル,周囲の湿度,帯電量などに左右されます.付属のデモ・プログラムは,一般的な環境条件での使用を想定しています.このデモ・プログラムの一部を変更することにより,さまざまなタッチ・センサの機能を実現できます.
開発ボードとパソコンの接続にはUSBケーブルを使用します.ソフトウェアはシリアルCOMポートをエミュレートして通信を行います.