トヨタ・グループ開発の標準鉛フリーはんだが各社から登場 ―― 第40回 インターネプコン・ジャパン・レポート

福田 昭

tag: 実装 電子回路

レポート 2011年1月21日

 電子機器の組み立て技術(はんだ付け技術)に関する国内最大の展示会「第40回インターネプコン・ジャパン」が,2011年1月19日~21日に東京ビッグサイトで開催された(写真1).国内では,はんだ付けの鉛フリー化(はんだ付け工程における鉛を含まないはんだ合金の採用)がほぼ完了した.現在は,用途の違いによって生じるさまざまな要求仕様に対応した各種の鉛フリーはんだ合金が,はんだメーカ各社から提供されるようになっている.その最新状況が,インターネプコン・ジャパンで披露されていた.

写真1 第40回インターネプコン・ジャパンの来場者登録受付
2011年1月19日~21日に東京ビッグサイトで開催された.

※ 本レポートの写真をクリックすると拡大できます.

 

●トヨタ,デンソー,富士通テンの共同開発による車載用はんだに注目

 今回のインターネプコン・ジャパンで注目の展示は,トヨタ自動車グループとはんだメーカが共同開発した車載用鉛フリーはんだペースト「GSP(Global Solder Paste)」だろう(写真2).トヨタ自動車,デンソー,富士通テンが複数のはんだメーカとともに共同開発し,車載用電子機器のリフロはんだ付けに採用していたはんだペーストである.

写真2 車載機器用鉛フリーはんだペースト「GSP」
トヨタ自動車,デンソー,富士通テンが,複数のはんだメーカとともに共同開発した.

 

 このGSPをはんだメーカ各社が展示していた.インターネプコン・ジャパンの会場で展示を確認できた企業は,ハリマ化成弘輝ソルダーコートである.

 GSPのはんだ合金は,すず(Sn)を主成分とし,銀(Ag)を3.0重量%と銅(Cu)を0.5重量%含む組成となっている.この組成は標準的だ.エレクトロニクスの業界団体である電子情報技術産業協会(JEITA)が推奨組成とした「Sn-3.0Ag-0.5Cu」,または「SAC305」と表記される合金組成と変わらない.

 GSPが既存のはんだペーストと大きく違うのは,フラックスである.車載用電子機器では,温度変化によるストレスが大きい.具体的には,マイナス40℃とプラス125℃の温度サイクルを繰り返す試験に少なくとも1000サイクルは耐える必要がある.しかし,従来のフラックスに標準的に採用されていたロジン系樹脂は,膜が硬くてもろいという弱点がある(写真3).このため,温度サイクル試験によってフラックス残さに亀裂(クラック)が入り,信頼性が低下してしまう.そこでGSPでは,フラックス用樹脂を独自に開発することで,クラックの発生を防いでいる(写真4).

写真3 従来の鉛フリーはんだペースト(ロジン系フラックス)を車載機器に適用したときの問題

 

写真4 0.5mmピッチQFPのランド・パターンで温度サイクル試験を実施した結果

 

 このほかGSPには,「絶縁抵抗が高い」(写真5),「QFPリードのぬれ特性が良好」(写真6),「ボイドの発生が少ない」(写真7),「チップ部品の横ボール(サイドボール)発生が少ない」(写真8)といった特徴がある.

写真5 絶縁抵抗試験の結果
10の9乗Ω(オーム)を超える高い絶縁抵抗を確保している.

 

写真6 QFPリードへのはんだぬれ性

 

写真7 2012タイプのチップ部品をはんだ付けしたとき,およびパワー・トランジスタをはんだ付けしたときのボイド発生状況

 

写真8 チップ部品はんだ付けの横ボール(サイドボール)発生状況

 

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