インテグリティな技術コラム(10) ―― トーナメント方式のクロックにおける反射回避方法
●縦続行列を用いて伝達関数を求める
式(1)と,入力側および出力側の電圧と電流の関係により,伝達関数を求めることが出来ます.式がたくさん出てくるので,式の経過は稿末の付録にまとめます.図4のように,接続したときの伝達関数は付録の式(付4)のようになりますが,簡単化のため,遠端を開放(R2=∞)とすると,伝達関数は以下のようになります.
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図4 近端と遠端の条件
線路の縦続行列は,以下のように線路の特性インピーダンスZ0と遅延τを用いて表せます.
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三角関数と指数関数はオイラー(Euler)の公式により互いに変換できますが,複数の線路の縦続接続の場合は,三角関数よりも指数関数のほうが便利です.
図5に示す,トーナメント方式の最も簡単な2段の場合の縦続行列のA12とC12を求めると,式(4)および式(5)となります.
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図5 最も簡単なトーナメント方式
(a) 最も簡単な2段のトーナメント方式
(b) 等価回路
ここで,さらに簡単化のためにドライバの出力抵抗と線路の特性インピーダンスが等しい,すなわち送端終端を考えると,式(2)の伝達関数は以下のようになります.
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右辺に含まれる指数関数は,それぞれ時間遅れ,すなわちフーリエ逆変換において以下の関係であることを意味します.
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式(6)の右辺の最後の指数はτ1+τ2の時間遅れ,すなわち,図4のドライバからレシーバまでの総遅延時間です.かっこ内は,最初の振幅に対して2τ2ずつ遅れるごとに1/3を掛けた振幅を加算することを意味し,その時間応答は図6のようになります.
図6 最も簡単なトーナメント方式の時間応答波形