インテグリティな技術コラム(8) ―― メモリ・バスの周波数特性と転送速度
●周波数帯域と転送速度の間の関係
さて,図1のSDRAMを用いたメモリ4個のバスの周波数帯域は138MHzでしたが,NRZ(Non-Return-to-Zero) のパルスは,ほぼ2倍の276Mbps程度までは通りそうです.138MHzの正弦波を矩形波にすると,その2倍なので,「ほぼ」としたわけです.
ここで,パルス波形のスペクトラムについて考えてみます.パルス波形の持つスペクトラムは,フーリエ変換を用いて求めることができます.図4(a)に示す,立ち上がり時間をゼロとしたときのパルス幅TW,周期Tのパルスのフーリエ変換は,以下の式で求められます.
..... (1)
図4 パルス波形
右辺は指数の定積分なので,計算は簡単です.
..... (2)
式(2)の右辺の係数TW / Tは定数で,スペクトラムの形とは無関係です.図4(b)の有限の立ち上がり時間trを有する場合のスペクトラムは,係数を省略して,以下のように表されます.
..... (3)
図5は,パルス幅TWと立ち上がり時間trの関係をtr / TW=0.1~0.5としたときの式(3)を表したものです.
図5 スペクトラム
横軸はパルス幅TWで正規化しています.図5の右上には,縦軸をデシベル(dB)で表して,帯域の定義の3dB下がった点を見つけると,ほぼ0.4付近になりました.すなわち,周波数(MHz)とNRZのパルスの転送速度(Mbps)の間には,「周波数=0.4×転送速度」の関係があることが分かります.先に,転送速度は周波数のほぼ2倍と述べましたが,0.4の逆数の2.5倍となるわけです.
従って,図2の周波数特性で110MHzの周波数帯域の場合,138×2.5=346Mbpsの転送が可能と考えられます.モジュールの規格ではPC2700に相当します.図6は,このときのアイ・パターンを示しています.
図6 負荷が4個のときのアイ・パターン
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