筐体の製造工場を見る ―― 板金加工と樹脂加工の概要
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技術解説 2010年10月21日
ここでは電子機器を作る際に,電子回路設計の技術以外で知っておきたい情報として,筐体などを作る際に必要な構造設計に注目します.電子回路設計者にとっては専門外の分野になるので,説明は概要にとどめ,板金加工と樹脂加工の現場の様子を写真で紹介します.(編集部)
※ 本記事は,ディジタル・デザイン・テクノロジ No.7から転載いたしました.同誌はこちらから購入できます.
マイコン基板の開発では,電子回路の設計技術が最も重要です.しかしマイコン基板を組み込む製品を開発する場合は,電子回路の設計技術だけでは不十分です.例えばプリント基板が筐体に収められて,製品として完成することになるからです.
ここでは,電子機器を作る際に,電子回路設計の技術以外で知っておきたい知識の一つを紹介します.具体的には,筐体などを作る際に必要な構造設計です.
筐体の製造工程を知ることで,板金に合わせやすい形状や,樹脂加工品の特性を意識した製品作りが出来るようになります.すなわち,より洗練された製品を考えられるようになるはずです.
1.筐体設計の概要
プリント基板だけの製品というものは,ほとんどありません.技術者としての仕事では,開発キットとしてプリント基板だけを購入したり,開発したプリント基板を製品として納入することがありません.しかし,民生機器の中に,プリント基板がむき出しの製品はありません.プリント基板は,筐体に包まれているのが製品らしい姿といえます.
機器の開発の中で,筐体を作ることを筐体設計といいます.筐体設計は,現在ではほとんどの場合,3次元図面作成ツールを用いて行っています.プリント配線板の設計と同様に,ツールで作成したデータを,板金加工会社や樹脂設計会社に送ると,筐体が出来上がってきます.
市販製品には,アルミニウム製やプラスチック製の筐体があります.筐体設計では,使用する材料や製造技術によって,数々の手法がとられます.代表的な手法として,板金加工,アルミ押し出し,樹脂加工があります.
①板金加工
鉄やステンレスなどの金属の板を使って筐体を製造する方法です.板材から部品を切り出し,曲げ加工を行い,溶接などによって組み上げます(写真1).
写真1 板金加工品の例
板材から部品を切り出し,曲げ加工を行い,溶接などによって組み上げる.
②アルミ押し出し
アルミの押し出し材と呼ばれるフレームを用いる方法です.穴の開いた型からアルミを押し出すことで,フレームを製造します.
③樹脂加工
ABSやPPなどの樹脂素材を成形して筐体を製造する方法です.成形のための型を作り,そこに樹脂を流し込んで作ります(写真2).
写真2 樹脂加工品の例
成形のための型を作り,そこに樹脂を流し込んで作る.
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