携帯電話内部の高速データ転送,次の主役は「MIPI M-PHY」―― 広範なアプリケーションを見据えた多芸多才の標準規格

Ashraf Takla,George Brocklehurst

tag: 半導体 実装

技術解説 2010年10月 7日

●最後に求められるのは協業による業界の活性化

 M-PHYの展開が成功するために必要な最後の要素は,開発から,テスト,相互接続性のデモンストレーション,市場へのM-PHYインフラの供給までをカバーする健全なエコシステム(生態系)の構築です.それぞれの役割を担うサプライヤ間の協業こそがM-PHYの舞台の「最後のひと幕」であり,MIPIアライアンスに参加する多数の協力者のおかげで実現した標準化作業の成果を最大化します.

 活気に満ちたエコシステムの実現に欠かせない要素の一つが,IP(Intellectual Property)ベンダです.彼らは,即座に導入可能なM-PHYサブシステムを開発し,市場に供給します.M-PHYインターフェースをユニークな存在にしているのは,その多才多芸な特質です.M-PHYは多くのアーキテクチャ・オプションを持ち,多くの異なるアプリケーションに対応できます.それゆえ,万人の要求に応えられるIPコアを提供しようとすると,IPベンダは自分で自分の首を絞めることになりがちです.

 この点が,PCI ExpressやSerial ATA,DDR(Double Data Rate)のような他の標準規格と異なるところです.PCI Expressなどの規格では単一のアーキテクチャが定義されており,多数の顧客の要求に応えるため,さまざまなプロセス・ノードに向けてIPがポーティングされています.

 M-PHYがその潜在能力を発揮し,アプリケーションごとに最適化されたソリューションとなるためには,消費電力,面積,トータル・コストのすべての要求を満足させる必要があります.型にはまったやり方では,これを実現できません.MIPIの導入を成功させるには,MIPIのIPコアを提供するベンダと手を組む必要があります.IPベンダは,手軽に導入できて,シリコン・チップで動作を検証済みで,それにもかかわらずカスタマイズ可能で,高品質で,競争力のあるMIPIのIPコアを手頃な価格で供給します.

 例えば米国Mixel社は,すでにM-PHYを利用している1社である日本のグラフインとの協業を発表しています.両社は,グラフインの評価システムに使われる「Golden M-PHY」ICを共同開発することにより,MIPI M-PHYエコシステムの構築を支援する計画です.この「Golden M-PHY」ICは,今後,M-PHYの相互接続性およびテストの要求にも対応していく予定です.またMixel社は英国Nanotech Semiconductor社とも協業しています.この会社はM-PHYの光小委員会に主査として参加しており,光伝送を利用するMIPI M-PHYエコシステムの構築を支援しています.

 Mixel社では「レゴリズミック」と呼ぶ手法を採用しており,これによって手軽に導入できるMIPI IPを効率的に開発しています.この手法では,シリコン・チップによって動作検証済みの回路ブロックをもとにIPコアを構築していきます.この回路ブロックは,各種のM-PHYアプリケーションに求められる広範な(M-PHY風の)要求に適合できるように開発されています.

 

参考文献
(1) ABI Research;"1.2 Billion Mobile Devices Shipped in 2009, Says ABI Research",Wireless and Mobile News,Dec. 2009,http://www.wirelessandmobilenews.com/2009/12/12-billion-mobile-devices-shipped-in-2009-says-abi-research.html

 

Ashraf Takla
Mixel社 President and CEO
http://www.mixel.com/

George Brocklehurst
Nanotech Semiconductor社 Marketing Director for Consumer
http://www.nanosemi.co.uk/
MIPIアライアンス PHY作業部会 副主査 / 光小委員会 主査

 

◆筆者プロフィール◆
Ashraf Takla
.Mixel社を1998年に創設.その前はHitachi Micro Systems社 Director of Mixed-Signal Designを務める.AMI Semiconductor社やSierra Semiconductors社でも仕事をしていた.アナログ回路設計およびミックスト・シグナル設計の分野で30年の経験があり,5件の特許を取得している.米国San Diego State Universityにて学士号(BSEE)と修士号(MSEE)を取得.

George Brocklehurst.半導体業界の家電向けや通信向けの分野で,製品開発および市場開発について10年の経験がある.Southampton Solent UniversityでMBA(経営学修士)の学位を,Southampton Universityで学士号(BEng Electrical Eng)を取得.

 

 

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日