振動や温泉,室内光など,未利用のエネルギーを電力に変換する技術が続出 ―― TECHNO-FRONTIER 2010
●温泉水を利用した熱電発電システム
温度差による熱エネルギーを電力に変換するには,「ゼーベック効果」を利用することが多い.ゼーベック効果とは2種類の導体で温度差があると電圧を生じる現象で,温度差が大きいほど高い電圧を発生する.逆に,2種類の導体に電流を流すと温度差が生じる現象を「ペルチェ効果」と呼ぶ.
ペルチェ効果を利用して発熱体を冷却する素子をペルチェ素子と呼ぶが,ペルチェ素子に温度差を与えるとゼーベック効果によって発電器となる.このため,温度差発電(熱電発電)にはペルチェ素子を使うことが多い.TECHNO-FRONTIER 2010のエネルギー・ハーベスティング・ゾーンでも温度差発電の展示はすべて,ペルチェ素子を利用した発電器だった.
温度差発電で商用化の実績を誇っていたのが東芝である.温泉の熱を利用した出力100Wの熱電発電システムを開発し,群馬県草津町のベルツ温泉センターで2005年に商用運転を始めた(写真14,写真15).95℃の温泉水と10℃の冷却水(湧き水)の温度差を利用して発電するシステムで,320個の熱電変換モジュールで構成されている.また三機化工建設の周東事業所でも,排熱を利用した熱電発電システムを実証試験中だという.

[写真14] 熱電発電システムの説明パネル

[写真15] 群馬県草津町のベルツ温泉センターに設置した熱電発電システム
展示ブースには熱電変換モジュールの実物を出品していた(写真16).東芝が開発したビスマス・テルル(BiTe)系ペルチェ素子を576枚搭載したモジュールである.36個のペルチェ素子を直列接続したアレイを温水と冷水の間に上下2段で配置し,これを8列並べた.

[写真16] 温水と冷水の温度差を利用する熱電発電モジュール
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