振動や温泉,室内光など,未利用のエネルギーを電力に変換する技術が続出 ―― TECHNO-FRONTIER 2010
エレクトロニクスとメカトロニクスに関する展示会「TECHNO-FRONTIER 2010」が,2010年7月21日~23日に東京ビッグサイトで開催された(写真1).TECHNO-FRONTIER 2010は,EMI・ノイズ対策技術や電源技術,モータ技術,モーション制御技術,部品洗浄技術,熱対策技術などの複数の専門展示会で構成される.

[写真1] TECHNO-FRONTIER 2010の来場者受付
今年は,最近の注目技術であるエネルギー・ハーベスティングを集中展示するコーナ「エネルギー・ハーベスティング・ゾーン」が設けられた.本レポートではエネルギー・ハーベスティングを中心に,展示会のトピックスをお届けする.
エネルギー・ハーベスティングとは,従来は捨てられていたエネルギー(未利用のエネルギー)を電力に変える技術である.技術そのものは数十年前から存在する.最近になって注目を浴びているのは,地球温暖化問題への関心の高まりが大きな理由だ.地球温暖化ガスを発生しない,再生可能なエネルギー源を電力源に利用しようとする試みが世界各地域で盛んである.その代表は太陽光発電や風力発電だろう.太陽光エネルギーと風力エネルギーも従来は捨てられてきたのだから,広義にはエネルギー・ハーベスティングと言えなくもない.ただし現在の「エネルギー・ハーベスティング」は,以下のようなエネルギーを電力に変換する技術を指すことが多い.
- 振動(運動エネルギー)
- 温度差(熱エネルギー)
- 室内照明(光エネルギー)
TECHNO-FRONTIER 2010の「エネルギー・ハーベスティング・ゾーン」では,これらのエネルギーを電力に変換する技術の最新状況が数多く展示されていた.
●東京駅で実証試験を実施した振動発電システム
振動を電力に変換する物理現象として古くから知られているのは,圧電効果である.圧電効果とは,物体が伸縮すると電気を生じる性質を指す.圧電セラミックスや圧電高分子などの圧電効果を有する材料を使って圧電素子を製造し,圧電素子を数多く並べて振動を電力に変換する.
ジェイアール東日本コンサルタンツは,圧電素子を床にならべた発電システムを試作し,東京駅で2006年度(平成18年度)~2008年度(平成20年度)に実証試験を実施した(写真2).東京駅の利用客が床を踏むことで圧電素子が電気を発生するシステムである.TECHNO-FRONTIER 2010では,この実証試験の概要と結果を説明するとともに,床発電システムの実物を展示していた(写真3).実証試験中に発電システムに改良を加えた結果,利用客1名当たりの発電量を3年間で約40倍に増やすことができたとする.

[写真2] 床発電システムと実証試験の説明パネル

[写真3] 展示ブースの床に置かれた発電パネル
また展示会場内の一角に駅の自動改札を模擬した床発電システムを設置し,来場者が床発電システムを体験できるようにしていた(写真4).発電パネルを踏むと発生した電力によって赤色LEDが点灯する.

[写真4] 来場者が床発電システムを体験できるコーナ
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