スキル診断調査,組み込み技術者 vs. IT技術者
●「ハイレベル」の人材が不足
総合スキル・レベル別の分布をみると,組み込み技術者もIT技術者も全体の分布傾向はほとんど変わらない.どちらも社内外において専門分野の技術,手法,ビジネスをリードできるレベル5注1以上の「ハイレベル」の人材が少ないようだ(図4).特に,新技術開発や標準化などにおいて業界をリードできるレベル7の人材は非常に少ない.
年齢別のスキル・レベルの分布(図5)のハイレベル(レベル5以上)の人材に注目すると,組み込み技術者では年齢が上がるにつれて増えており,40代では1~2割,50代では2~3割となっている.一方,IT技術者の場合も年齢が上がるにつれてハイレベルの人材が増えているが,40代では1割未満,50代でも約1割程度にとどまる.
逆に,「エントリ・レベル(レベル1,2)」の人材に注目すると,組み込み技術者では56歳以上でエントリ・レベルの技術者が30.8%存在する.一方,IT技術者では56歳以上のエントリ・レベルの技術者が25.4%存在する.
*注1: スキル・レベルの定義については,ITスキル研究フォーラムのWebサイト上の調査レポートを参照(「組み込み技術者向け」,「IT技術者向け」).
●組み込み技術者のキャリア・パスには二つのパターンがある
図6(a)の組み込み技術者の職種別スキルの分布におけるハイレベルの人材は,「プロダクト・マネージャ」(18.3%),「プロジェクト・マネージャ」(18.2%)といった全体を統括する職種に多く存在し,このほかに「開発プロセス改善スペシャリスト」(16.3%),「QAスペシャリスト」(7.6%),「ブリッジSE」(6.3%),「ドメイン・スペシャリスト」(5.3%)などの専門性を要する職種に分布する.一方,「テスト・エンジニア」,「ソフトウェア・エンジニア」,「開発環境エンジニア」,「システム・アーキテクト」はエントリ・レベルとミドル・レベルがほとんどを占め,ハイレベルの人材は少ない.前述の年齢別スキル・レベルの分布と合わせて考えると,若いうちにテスト・エンジニアやソフトウェア・エンジニアを経験したあと,プロジェクト・マネージャなど総合的な能力を要するマネージャ職に向かう技術者と,開発プロセス改善スペシャリストなど専門性を追求するスペシャリストに向かう技術者の二つのキャリア・パスがあると考えられる.
これに対して図6(b)のIT技術者の職種別スキルの分布をみると,ハイレベルの人材は「コンサルタント」(23.1%),「プロジェクト・マネジメント」(7.9%),「ITアーキテクト」(8.1%)などの職種に存在する.また,「マーケティング」(11.5%),「セールス」(6.1%),「エデュケーション」(5.9%)など,技術以外の知識・経験を要する職種にも存在する.しかし,「ITスペシャリスト」,「アプリケーション・スペシャリスト」,「ソフトウェア・ディベロップメント」,「カスタマ・サービス」,「ITサービス・マネジメント」,「品質保証」などの職種に,ハイレベルの人材はほとんどいない.IT技術者においては,「プロジェクト・マネジメント」や「コンサルタント」などのマネージメント職,「ITアーキテクト」などの技術専門職,「マーケティング」や「セールス」,「エデュケーション」など一般性の高い専門職というように,多様なキャリア・パスが存在している.