USB 3.0規格のFAQ(2) ―― SuperSpeed USBはいかにして高速伝送を実現しているのか?
Q.送信側と受信側でリファレンス・クロックが異なると,データを取り損ねることはないのか?
A.受信側にエラスティック・バッファを設けて速度差を吸収している.
受信側の物理層は送信データに同期させたクロックでデータを取り込むため,そこで差が出ることはありません.一方,ロジック側では別々のリファレンス・クロックを使用しているため,クロックの速度差によって影響が現れます.そのため,skipオーダード・セット(SKPOS)と呼ばれる特定の特殊文字列(二つのK28.1で構成)の挿入・削除により,リンク内の送信側と受信側のクロック周波数偏差を吸収します.
レシーバは,エラスティック・バッファによって受信してデシリアライズしたデータを一時的にバッファリングし,skipオーダード・セットの挿入・削除を行います(図22).規格ではトランスミッタは,平均354シンボルごとにskipオーダード・セットを挿入する必要があります.エラスティック・バッファは,skipオーダード・セットの周期を踏まえて,スペクトラム拡散クロックの影響を含む送信側と受信側のクロック周波数差に対応できる容量が必要になります.
図22 エラスティック・バッファの動作原理
図23は,レシーバへのデータとレシーバが受信したデータをトランスミッタから返送させる,ループバックという方法を使って比較したものです.図23(a)ではD7.1に続いて挿入された2個のK28.1(SKPOS)が,図23(b)では4個に増えています.また,図23(c)ではD18.1とD29.1の間に挿入されていた2個のK28.1が,図23(d)では抜かれています.
(a) レシーバへのデータ1
(b) 2個のK28.1(SKPOS)が挿入されている
(c)レシーバへのデータ
(d)2個のK28.1(SKPOS)が抜かれている
図23 レシーバへのデータとレシーバが受信したデータを比較
(第3回に続く)
畑山 仁
日本テクトロニクス(株)