倒立振子を作ってみよう ―― 廉価なキットで手軽に体験する
倒立振子(とうりつしんし)という名前を聞いたことがありますか?普通の振子は図1のように支点から重心が吊り下げられた構造をしています.倒立振子はその名の通り,振子が逆立ちした構造をしたもので,支点の上に重心があります(図2).このため,なんらかの方法でバランスを制御してあげないと,すぐに転んでしまいます.一般には,傾きを検知するジャイロなどのセンサと,その情報をもとに重心を制御するマイコンと駆動機構で構成します.倒立振子のしくみを応用したものには,トヨタ社のWingletのような乗り物や,今年度からETロボコンに登場する教育用レゴ・マインドストームのNXT走行体などがあります.人間も,重い頭や身体をたった2本の足で垂直の姿勢を保っていますので,一種の倒立振子と言えるかもしれません.
なにも制御しないと倒れる.
面白そうなのでちょっと試してみたい倒立振子ですが,メカニズムを含む構造体が必要ですし,制御のソフトウェアもゼロから構築するのはなかなか困難です.そんな折,ヴィストンからBeauto Balancer(ビュート・バランサ)という倒立振子のキットが発売されました(写真1).倒立振子を構成するすべての機械部品と電子回路がパッケージになっており,同社のWebサイトからは制御ソフトウェアのソース・プログラム(C言語)をダウンロードして学習することもできます.気になるお値段も1万円未満と,入手しやすい価格です.早速購入して組み立ててみましたので紹介します.
●まずは準備しよう
パッケージの中には,写真2のように組み立て説明書と部品,プログラムを書き換えるときに必要なUSBケーブルが入っています.ネジ類などの細かな部品はまとめてビニール袋に梱包されています.なくさないよう,写真3のようにトレーに移すとよいでしょう.ちなみにこのトレーはステンレス製で,百円ショップで買ったものです.
パーツ袋には小さなスパナ(工具)も同梱されている.回路基板は静電気に弱いので注意する.梱包に使用されている色付きエア・キャップは,静電気防止機能があるので使うまでしまっておこう.
紛失防止とともに,作業中に見つけやすい利点がある.
もう一つ,なぜかリスト・サポータが同梱されています(写真4).一瞬,ノベルティ・グッズか? と思ったのですが,どうやらこれも重要な部品の一つのようです(後述).本体はカタログ写真では鉄かと思っていたのですが,美しく塗装されたアルミ製で,安っぽさのない質感です(写真5).赤い色だからといって,特に3倍速ということはありません.
正しい使い方は後ほど.
部品を開梱したら,組み立て説明書の2ページ目を参考に,不足部品がないかどうかの確認も合わせて部品をチェックします(写真6).似たようなネジが何種類も含まれているので,説明書の写真とよく見比べてあらかじめ分類しておくと,後の作業がしやすくなります.
特にネジの種類に注意する.
次に工具です.組み立て説明書では,同梱のミニスパナのほかに,3種類のドライバが必要とされています(写真7).小さなネジには精密ドライバが必須ですが,これも前述のトレー同様に百円ショップで購入できます.
中央のミニスパナはキットに付属している.
そのほか,あると便利な工具は,ニッパ(車輪パーツを切り離す),ラジオ・ペンチ(CPU基板のスペーサを差し込む),ピンセット(小さなネジを扱う),ハサミ(モータ軸のチューブなどの切断)です(写真8).ミニ・ボックス・レンチもあるとよいでしょう(写真9).小さなナットを扱うのに,同梱のスパナより楽にできます.
左からニッパ,ラジオペンチ,ピンセット,ハサミ.
ナット側を固定するのに「あれば」便利.精密ドライバと同様に,百円ショップで入手できる.