ナノテクがLSI,発光素子,MEMSを変える ―― nano tech 2009レポート

福田 昭

●ナノ粒子で有機LEDの発光強度を高める

 東芝は,微小な粒子(ナノ粒子)を使って有機EL(OLED)の発光強度を1.6倍に高める技術について展示を行った(写真9).有機ELは基板,反射層,下部電極層,有機発光層,上部電極層で構成される.有機発光層の光を上部電極層から外部に取り出す仕組みである.ところが上部電極層と反射層の間で光が全反射してしまい,発光強度(外部に取り出せた光の強度)があまり上がらないという問題があった.そこでナノ粒子を使い,反射層と下部電極層の間に回折格子を形成した.回折格子で光が散乱されるので,発光強度が高まる.試作した緑色有機ELでは,全光束で発光強度を1.6倍,ピーク波長では2倍に高めることができた.

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[写真9] 有機EL(OLED)で光を取り出す原理

 ナノ粒子にはコロイダル・シリカを使った.コロイダル・シリカは半導体製造の平坦化工程(CMP工程)で大量に使われており,安価に入手できる.直径100mm(4インチ)の二酸化シリコン・ウェハに接着剤をスピンコートし,コロイダル・シリカを堆積させて単層だけ残す.このときコロイダル・シリカは,ほぼ整然と2次元マトリクス状に整列する.ごく一部に欠陥が入るものの,実用上は問題にならないという.このコロイダル・シリカをマスクにウェハを加工すると,回折格子(周期的な凹凸)を形成できる(写真10)

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[写真10] ナノ粒子で回折格子を作製する工程

 また東芝は,圧電MEMS技術による容量可変の超小型キャパシタを試作し,実物を展示した(写真11).圧電材料は窒化アルミニウム(AlN).AlN薄膜によるカンチレバ・タイプのアクチュエータを作製し,下部基板との間で静電容量を形成する.アクチュエータを動かすことで静電容量が変化し,約3倍まで容量を変えられるという.この技術を利用すると,CMOS LSIに容量可変のキャパシタを集積できる.

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[写真11] 圧電MEMS技術による容量可変キャパシタ

 展示ブースでは試作したキャパシタを光学顕微鏡で観察するセットを組み,アクチュエータが動く様子を来場者に披露していた(写真12)

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[写真12] 容量可変キャパシタの模型

4枚のカンチレバで構成する.中央の2枚の右端が浮いており,下部電極との間でキャパシタを形成している.両端の2枚はカンチレバの反りをキャンセルするために存在する.

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