印刷や発電,記憶など,ナノテクの多彩な応用が集結 ―― nano tech 2010レポート

福田 昭

tag: 半導体

レポート 2010年2月23日

 ナノテクノロジの技術と製品に関する展示会/学会「nano tech 2010 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」が,2010年2月17日~19日に東京国際展示場(東京ビッグサイト,東京都江東区)で開催された(写真1).主催はnano tech実行委員会である.


写真1 会場受付の様子

 

 展示会の出展企業・団体数は654企業・団体,出展小間数は803小間だった.世界的な景気後退にもかかわらず,出展数は前年(2009年)の603企業・団体を上回った.ただし,小間数は前年の909小間よりも少なく,出展規模を縮小した企業・団体があったことをうかがわせた(写真2).

 開催初日の2月17日に展示会場を歩いた限りでは,来場者はかなり多く,会場のあちこちで熱心に質問する来場者の姿が見られた.nano tech 2010は,製品の展示が主体の見本市とは異なり,研究についての展示が少なからずあり,説明員が研究者自身であることが多い.このため,技術的に深く突っ込んだ議論が交わされていた.


写真2 展示会場の様子

 

●多種多様なナノテク研究をNEDOが支援

 nano tech 2010の展示会場でひときわ目立っていたのは,NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術開発機構)の巨大な展示ブースである.NEDOは企業にとってリスクの高い中長期の研究活動を支援している組織である.nano tech 2010では,NEDOが支援するナノテクノロジ関連の研究プロジェクトと研究成果が数多く展示されていた.本レポートではその中から,興味深かった展示を紹介したい.

 発光ダイオード(LED)プリンタのプリント・ヘッドにナノテクノロジを応用したのが,沖デジタルイメージングとユーテック,クリスタル光学の共同研究プロジェクトである(写真3).LEDチップの温度上昇を従来の1/5に下げる高放熱技術を開発した.放熱性の高い銅ウェハにDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜を成膜し,LEDチップとDLCを分子間力接合によって接着した.従来はシリコンのドライバ・チップとLEDチップを絶縁膜を介して接着しており,絶縁膜の放熱性があまり高くないことが課題となっていた.

 放熱性を5倍に高めた結果,光出力を従来の5倍に高められるようになったという.展示ブースでは,試作したLEDプリント・ヘッドを展示し,実際に発光させていた(写真4).1分間に60ページを連続印刷するページ・プリンタに組み込まれる予定だという.


写真3 分子間力を利用して製造した高放熱LEDプリント・ヘッドを説明したパネル

 



写真4 中央の万力で挟んであるのがLEDプリント・ヘッド
左はDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜を成膜済みの銅ウェハ.

 

 高分子(ポリマ)のエレクトレットを使って振動エネルギを電気エネルギーに変換する小型発電モジュールを開発中なのが,旭硝子オムロンの共同研究グループである(写真5~写真7).モジュールの大きさは20mm×20mm×4mm.周波数30Hz,加速度0.15gの振動を与えたときに,40μWの交流電力を発電する.30Hzという周波数はモータの振動や走行中の自動車のタイヤの振動を想定したものだという.出力電圧はピーク・ツー・ピークで240Vとかなり高い.


写真5 エレクトレットを使って振動エネルギを電気エネルギに変換する小型発電モジュールを説明したパネル

 



写真6 エレクトレットを使って振動エネルギを電気エネルギに変換する小型発電モジュール(続き)

 



写真7 試作した発電モジュール

 

 遷移金属酸化物を次世代の大容量不揮発メモリ・チップに応用したのが,シャープアルバックの共同研究チームである(写真8).金属コバルトの酸化物をメモリの材料に使う.既存の半導体CMOSプロセスと組み合わせることで,直径200mmのシリコン・ウェハ(写真9)に128Kビットのテスト・チップ(写真10)を作り込んでみせた.

 このメモリは抵抗変化メモリ,あるいはRRAM,ReRAMと呼ばれる.フラッシュ・メモリよりも書き込みが速く,ハード・ディスクよりも消費電力が低い大容量不揮発メモリを実現できる可能性がある.



写真8 遷移金属酸化物を次世代の大容量不揮発メモリ・チップに応用する研究を説明したパネル

 


写真9 128Kビットのテスト・チップを作り込んだシリコン・ウェハ

ウェハの直径は約200mm.

 



写真10 128Kビットのテスト・チップの写真
チップ寸法はおよそ5mm角.

 

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