ナノテクがLSI,発光素子,MEMSを変える ―― nano tech 2009レポート

福田 昭

●カーボン・ナノチューブを印刷トランジスタに

 NECは,短絡と開放の二つの状態を繰り返せる不揮発性の微小なスイッチ技術「NanoBridge」の研究概要を紹介した(写真7).シリコンLSIの配線接続や論理回路などを外部から電気的に変更できる技術である.CMOS論理LSIと組み合わせることで,外部から機能や仕様などを変更できる柔軟性の高いシステムLSIの実現を狙う.

 このスイッチは金属層,固体電解質層(絶縁層),金属層の3層構造になっている.固体電解質層に電圧を加えると金属イオンが固体電解質層内に析出し,金属層間を電気的に接続する.電圧印加を止めても接続状態はそのまま残るので,不揮発性のスイッチとなる.反対方向の電圧を固体電解質に加えると析出していた金属が固体電解質に溶けていき,絶縁状態となる.スイッチングに要する時間は数十μs,印加電圧は2V~4Vである.

 金属層は白金(Pt)層と銅(Cu)層,固体電解質は酸化タンタル(TaO).スイッチングでは,白金層から銅層の方向に電極が析出する.20nm角程度の微小なスイッチは試作できているという.

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[写真7] 短絡状態と開放状態を繰り返せる不揮発性の微小なスイッチ技術「NanoBridge」

 NECはまた,カーボン・ナノチューブをチャネル領域に用いたトランジスタの研究成果を展示した(写真8).プラスチックなどの軟らかい基板に印刷技術で電子回路を構築する,プリンタブル・エレクトロニクスに関する研究の一環である.

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[写真8] カーボン・ナノチューブをチャネル領域に採用し,印刷工程だけでトランジスタを試作した研究成果

 印刷技術でトランジスタを作製する場合,ふつうは有機半導体材料をチャネルに使う.ただし有機材料は電子移動度が低く,高速に動作するトランジスタを製造することが難しい.カーボン・ナノチューブは電子移動度が有機半導体の約100倍と高いので,高性能なトランジスタを実現することが期待できる.NECは,カーボン・ナノチューブを含めた電極や絶縁体などのすべてを印刷で形成したトランジスタを作製し,基本的な動作を確認した.

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