マイコン・ボードで電球を点滅させよう ―― ポート出力を使ってAC100Vを制御する
写真1は,SESSAME(組込みソフトウェア管理者・技術者育成研究会)が領布している教育用マイコン・ボード「MagicalBOX2-sim(以下,マジカル・ボックス)」です.78K0S/KA1+というマイコンと超音波センサを搭載していて,音(超音波)を入力することにより,マジカル・ボックスを接続したパソコン上の飛行船シミュレータを制御します.超音波はスプーンを叩き合わせることで発生させます.最初に4回叩いてマイコンにリズム(入力タイミング)を認識させ,続く4回分のタイミングで4ビットの制御コマンドを入力します.
[写真1] 教育用マイコン・ボード「MagicalBOX2-sim」
表示用に小さなLEDが実装されている.
このボードにはLEDも搭載されており,スプーンの音に合わせて点灯します.このLEDは写真1でも分かるように,チップ部品の小さなものです.一人でマジカル・ボックスを使うにはこれで十分ですが,授業などで大勢で楽しむには,ちょっと後ろの人には見えにくいという問題があります.
そこで,大きな表示ランプを付けてみることにしました(写真2).最近はかなり大型のLEDも入手可能ですが,ここはちょっとレトロに「電球」を点灯させてみることにします.
[写真2] LEDの代わりに電球が点灯する
●電気の制御の基本はスイッチ
電球を点滅させるには,スイッチが必要です.ただし手動ではなく電気の力で動作するものでないと,マイコンで制御できません.通常はこのような用途には「リレー」という部品を使います(写真3).
[写真3] 電磁石と接点を使ったリレーの例
左側の接点がスイッチ部,右側のコイルは電磁石である.電磁石に電流を流すと,磁力で左側のスイッチ部分が動作する.コイルに電流が流れていないとき,接点は右側に接触している.電流が流れるとコイルの上の金属板がコイルに吸い付けられ,接点は左側に接触する(写真にマウスを合わせてみてください).
このリレーですが,以下のような問題があります.
- 動作時にカチカチと音がする.
- 電磁石はコイルなので(電線を何度も巻きつけてある),電流をOFFするときに逆起電力が発生する注1.このため回路的に対策が必要となる.
- 今回は交流をON/OFFする.このとき,交流の波形と非同期にON/OFFすると,大きなノイズを出す可能性がある(図1).
注1:コイルは,いったん電流を流すとそれを磁力のエネルギに変換して蓄積する.次に電流を切断すると,蓄積した磁力のエネルギを逆に電流に変換してコイルの両端に電圧を発生させる性質がある.これを逆起電力という.とても高い電圧が発生するので,対策しておかないとコイルを駆動している回路を壊してしまうことがある.
[図1] 交流波形(家庭用コンセントに供給されているAC100Vの波形)
家庭用100Vの交流はピーク値が±約141Vの正弦波になっており(実際の電圧は10%程度誤差がある),東日本では1秒間に50回,西日本では1秒間に60回電圧の向きが変化している.普通のリレーやスイッチで例えば①のタイミングで電源をON/OFFすると,高い電圧をつないだり切ったりすることになり,大きなノイズが発生する.
今回はこれらを解決する方法として,ソリッドステート・リレー(SSR;Solid-State Relay)という,半導体だけでできたリレーを使いました(写真4).
[写真4] ソリッドステート・リレー(AQG22105,パナソニック電工製)
左側の2端子が制御端子.右側が負荷側(ON/OFFされる側).
SSRにはゼロクロス動作という機能があり,どのようなタイミングでON/OFFしようとしても,負荷電圧が必ず0Vの地点,つまり図1の②や③のタイミングで動作するようになっています.これにより,ノイズの発生を少なくすることができます.また,機械式接点がないので,動作音もしません.
そのほか,SSRの特徴や内部の等価回路などについては,パナソニック電工のWebサイトに詳しい資料があります.
●SSRを選ぶときの注意点
リレーやスイッチもそうですが,SSRは扱える電流容量に留意して選択する必要があります.今回は,40Wの電球を制御しようとしています.100Vで40Wだと電流は0.4Aですが,消灯時の冷えている電球は抵抗値が低く,一般に点灯状態の電流の10倍前後の電流が一瞬流れます(これをサージオン電流という).今回は部品入手の関係で,パナソニック電工の「AQG22105」というSSRを使いました.この製品は負荷電流が2Aまで,サージオン電流が30Aまで制御可能なので,今回の用途には十分な性能を持っています.