回路テスタの選びかたから使いかたまで ――安価で手軽に使える基本的な測定器
テスタは電圧や抵抗を測ったり,配線パターンの導通チェックを行ったりと,ハードウェア・エンジニアにとってもっとも利用する機会が多い.価格も数千円からと廉価である.ここではテスタになじみの薄いソフトウェア・エンジニアや学生を対象に,便利さを覚えたら手放せないテスタの基本的な使いかたを紹介する. (編集部)
電気で遊ぶにも,しごとをするにも,もっとも役立つ測定器,それが「テスタ」です.電圧,電流,抵抗,そのほかいろいろな測定モードがあることから「マルチメータ」とも呼ばれます.これからハードウェア製作に取り組まれる方は,これを入手するところから始めてはいかがでしょう.
●テスタを手に入れよう
まずは1台手に入れましょう.値段は数千円から数万円までありますが,入門用には廉価なもので十分です.写真1はテスタの例です.手前左はアナログ式のものです.アナログ式は小型の簡易的なものを除いてほとんど見かけなくなりました.高級なものは目盛り板にミラーがついていて,針と針の像を合わせることによって正確に目盛りを読みとれるようになっていました(写真2).
写真1の中央上にあるのはペン型のテスタです(写真3).小型でかさばらず,手元で数値が読める利点があります.その一方で,部品が入り組んだ細かい場所は計測しにくいなどの弱点もあります.携帯用や非常用など,2台目として所有するには良いのですが,1台目は以降に紹介する機種をお勧めします.
写真1 テスタのいろいろ
一番奥のペン型は 中国COLLUCK社のHH3211D,手前左のアナログ型は日置電機のAF-105,手前真ん中のディジタル型はGBW MEASUREMENTS社の GBW-9000,手前右のディジタル型は 三和電気計器のPC500.
写真2 アナログ式の高級モデルにはミラーが付いていた
写真3 ペン型テスタ
●オート・レンジとマニュアル・レンジの機種がある
写真1の手前の中央と右は一般的なディジタル・テスタの例です.似た形をしていますが,よく見ると中央のダイヤルの目盛りの数がずいぶん違います.中央黄色のものはマニュアル・レンジといって,測定値の範囲を手動で切り替えます.写真4は,直流電圧の測定切り替え部分を拡大したものです.写真ではダイヤルを「20」に合わせていますが,これは0から20Vまでを測定する場合の設定です.20Vを越える電圧を測りたいときは,もう一つ下の「200」に合わせる必要があります.
一方,右側の灰色のものの場合は,測定範囲の切り替えが自動的に行われます.拡大したものを写真5に示します.切り替えは測定対象(電圧または電流,抵抗など)だけで,測定値の範囲は自動的に最適なものに設定されます.実際に使ってみると,やはりオート・レンジ式のほうが便利です.しかし絶対的な差ではないので,予算と相談して選ぶのが良いでしょう.
写真4 マニュアル・レンジ切り替え
写真5 オート・レンジのダイヤル
●テスタ棒も要チェック
購入時は本体だけでなく,テスタ棒(実際に回路に接触させる棒)も要チェックです.ある程度高級な機種には,先端が金めっきされたテスタ棒が付属します(写真6).金めっきされていないテスタ棒は先端が早い段階で酸化して,測定しにくくなることが多いようです.もっとも,テスタ棒は別売されており,けっして高価ではありません.
写真6 テスタ棒.金めっきのものとそうでないもの