設計品質確保の思想 ――航空宇宙エレクトロニクスに学ぶ「信頼性設計」
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民生用機器と宇宙機器の接点
人工衛星などの宇宙システムでは,これまで特殊な規格が用いられることが多かったため,テストでは,オシロスコープやロジック・アナライザなどの汎用測定器を除くと,専用の装置が用いられてきました.しかし最近では,RISCプロセッサが搭載されるようになった結果,ICE(in-circuit emulator)やソフトウェアの統合開発環境など,民生用機器の開発と共通のものが使われるようになり,さまざまな技術交流が行われています.
また,宇宙機器向けのインターフェース規格として,IEEE 1355を改良した"SpaceWire"という規格が提唱されています.これは,FPGAとLVDSバッファがあれば数Mbps~数百Mbpsの通信を容易に実現できるインターフェースです.かならずしも専用デバイスを必要としないことから,写真A-1に示すような低コストの評価装置が共同開発されています.SpaceWireは非常に低コストで実現できるという特徴を備えています.また,故障時にう回路を簡単に実現でき,一本のケーブルでは伝送容量が足りない場合に動的に複数のケーブルを用いて大容量データを送ることができます.そのため,マルチメディア通信機器や車載機器の関係者からも関心が高く,宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究本部内にSpaceWireユーザー会が発足しています注A-1.
注A-1;http://www.isas.jaxa.jp/j/researchers/の「SpaceWireを用いた次世代アーキテクチャ」を参照.
写真A-1 SpaceCube 提供:宇宙航空研究開発機構(JAXA)
SpaceCubeは外形寸法が52mm×55mm×55mmのコンピュータで,T-Engine仕様と互換性のあるT-Engineアプライアンスである.100Mbps以上の通信レートを有するポートを三つ備えている.また,ディスプレイ,キーボード,マウスを接続すると電子プレゼンテーションも可能.EthernetやUSBのポートも備える.これにSpaceWire(宇宙機器向けインターフェース規格)のアナライザが実装されたテスト装置として,販売が予定されている.