SamsungやLG.Philipsが60インチ以上の大型PDPテレビを展示 ――LCD/PDP International 2002
2002年10月30日~11月1日,パシフィコ横浜(神奈川県横浜市)において,フラットパネル・ディスプレイに関する展示会「LCD/PDP International 2002」が開催された.今回の展示会では,韓国Samsung社や韓国LG.Philips LCD社が展示した60インチ以上の大型PDP(plasma display panel)テレビに人だかりができていた.また,帯電したインク粒子を利用するディスプレイにも注目が集まっていた.このほか,有機EL(electoro luminescence)ディスプレイを展示する企業が目立った.
●世界最大のPDPテレビに人だかり
Samsung社やLG.Philips LCD社といった韓国勢は,大型のPDPテレビを会場に展示し,その勢いを誇示した.特にSamsung社の63インチ型PDPテレビは世界最大ということもあり,展示ブースに絶えず人だかりができていた.
Samsung社の63インチ型PDPディスプレイの画素数は1,366×768,画素ピッチは1.02mm×1.02mm,色数は1,677万色,視野角は160度である(写真1).また,暗室時のコントラスト比は700対1.米国や韓国ではすでに発売されている.日本での発売時期は未定である.
[写真1]Samsung社の63インチ型PDPテレビ
本ディスプレイの画素数は1,366×768,画素ピッチは1.02mm×1.02mm,色数は1,677万色,視野角は160度である.
一方,LG.Philips LCD社は60インチ型PDPテレビを展示した(写真2).このディスプレイの輝度は900cd/m2と明るい.画素数は1,366×768,色数は1,677万色.視野角は160度である.暗室時のコントラスト比は1,000対1.
[写真2]LG.Philips LCD社は60インチ型PDPテレビ
本ディスプレイの輝度は900cd/m2と明るい.
また,富士通日立プラズマディスプレイは表示率の低い映像を忠実に表示できる新たな回路を搭載したPDPディスプレイ「H2シリーズ」を展示した(写真3).このディスプレイの輝度は900~1,000cd/m2,色数は1,677万色,階調は1,024である.サイズは32インチ型,37インチ型,42インチ型を用意している.放電電極の偶数ラインと奇数ラインを交互に発光させるALIS(alternate lighting of surfaces method)方式を採用している(写真4).
[写真3]ALIS方式の発光方法
本方式では,放電電極の偶数ラインと奇数ラインを交互に発光させる.
[写真4]富士通日立プラズマディスプレイPDPディスプレイ「H2シリーズ」
本ディスプレイでは,表示率の低い映像を忠実に表示できる新たな回路を搭載している.本ディスプレイの輝度は900~1,000cd/m2,色数は1,677万色,階調は1,024である.
同社が新たに開発したのは,表示率の明るさに応じて放電パルス幅(発光の回数)を制御する回路である.これにより,高い輝度を実現できたという.例えば,暗い夜空の星の光や金属の光沢など,表示率の低い映像を忠実に表示できるようになったという.さらに,新たな青色の蛍光材料を採用することにより,同社の従来品と比べて経年変化の劣化を30%改善することができたという.同社の製品は日立製作所のPDPテレビ「WOOO」や三洋電機のPDPテレビ「VIZON」などに採用されているもよう.
このほか,松下電器産業が50インチ型PDPテレビなどを,中国の中華映管社が46インチ型PDPテレビなどを展示していた.
●帯電インク粒子を利用したディスプレイが市場へ
凸版印刷は,白黒のインク粒子のそれぞれにプラスとマイナスの電荷を与え,上下に電界をかけて画像を表示する「E・inkディスプレイ」を展示した(写真5,写真6).本ディスプレイを搭載した機器は2003年に出荷されるもよう.本ディスプレイの技術は米国E ink社が開発した.なお,昨年のLCD/PDP Internationalでは,オランダのPhilips社が同技術を利用したディスプレイを展示していた.
[写真5]E・inkディスプレイの表示方法
白黒のインク粒子のそれぞれにプラスとマイナスの電荷を与え,上下に電界をかけて画像を表示する
[写真6]5インチ型E・inkディスプレイ
本ディスプレイを搭載した機器は2003年に出荷されるもよう.
E・inkディスプレイでは,基本的に,一度表示した画面の保持に電力を必要としない.このため,一般的な反射型液晶ディスプレイと比べて消費電力を1/10~1/100にできる.また,視野角は約180度.ほぼ紙と同じ反射率を持っており,一般的な反射型液晶ディスプレイと比べて,反射率を6倍以上にできるという.本ディスプレイの駆動方法はアクティブ・マトリックス方式である.画面サイズは5インチ,厚さは1mm弱,画素数は320×240,画素ピッチは80dpi.
凸版印刷は,本ディスプレイの前面板を製造している.前面板は,樹脂基板,透明電極,電子インク,接着剤の4層構造になっている.樹脂材料を用いていることや偏光板が不要になることから,ディスプレイを薄型化・軽量化しやすい.なお,カラー・ディスプレイの場合,カラー・フィルタが必要になる.
このほか,同社は厚さが0.3mmで,画面サイズが1.6インチと3インチのE・inkディスプレイも展示した.