SamsungやLG.Philipsが60インチ以上の大型PDPテレビを展示　――LCD/PDP International 2002

●有機EL素子を積層して輝度と寿命を改善

　有機ELディスプレイは，応答速度が速いことなどから，ブラウン管や液晶ディスプレイの次の技術として注目されているものの，輝度を向上させると素子の寿命が短くなるなどの問題がある．この問題を解決する技術の一つとして，有機EL素子を積層する手法がある．アイメスは，電流効率が100％以上の低分子型有機EL素子「有機ELマルチフォトンエミッション」を6層積層したものを展示した（写真7）．輝度は800cd/m²である．6層重ねたときの素子の厚さは約0.8μm．応答速度は一般的な有機EL素子と変わらないという．本有機EL素子は同社と山形大学が共同開発した．

［写真8］有機ELマルチフォトンエミッション
有機EL素子を積層することで輝度と寿命を改善できる．今回の展示では6層積層した．

　本有機EL素子は，ガラス基板，ITO（透明電極），ホール輸送層，電子輸送性発光層，電子注入層，電荷発生層，発光ユニット，Al陰極から構成される（写真8）．今回は，上記のうちの電荷発生層と発光ユニットを6層にした．一般の有機EL素子は電流密度が大きくなると寿命が短くなる．これに対して，今回の構造は従来の有機EL素子を直列に重ねているため，電流に対して重ねた素子の数だけ光量が増える．また，素子を重ねることにより電流密度が小さくなるため，寿命が延びる．例えば，輝度が1,000cd/m²，寿命が10,000時間の有機EL素子が必要な場合，輝度が100cd/m²，寿命が10,000時間の素子を10層重ねればよい．こうすると各素子の電流密度が1/10になり，寿命は10倍になる．なお，この技術の動作を使った素子について，現在，6層までの動作を確認できているという．

［写真8］有機ELマルチフォトンエミッションの構造
本有機EL素子は，ガラス基板，ITO（透明電極），ホール輸送層，電子輸送性発光層，電子注入層，電荷発生層，発光ユニット，Al陰極から構成される．今回は，上記のうちの電荷発生層と発光ユニットを6層にした．

　このほか，今回の展示会ではSamsung社が輝度300cd/m²の2.2インチ型有機ELディスプレイを展示した（写真9）．また，三洋電機は，白色発光を光源に利用した輝度300cd/m²の14.7インチ型有機ELディスプレイを展示した．さらに同社は有機ELディスプレイ用のドライバICを開発しており，本展示会でそのブロック図などを公開した．加えて，東芝松下ディスプレイテクノロジーなどが低分子型有機ELディスプレイを，セイコーエプソンなどが高分子型有機ELディスプレイを展示した．

［写真9］Samsung社の2.2インチ型有機ELディスプレイ
本ディスプレイの輝度は輝度300cd/m²である．

●TFT液晶でも韓国勢が大型パネルを展示

　液晶ディスプレイの分野でも，韓国メーカは大型パネルを展示した．まず，Samsung社が46インチ型TFT液晶ディスプレイを展示した（写真10）．本ディスプレイの画素数は1,280×720，色数は1,670万色である．コントラスト比は800対1，輝度は500cd/m²．また，視野角は170度，応答速度は12ms．2003年7～8月にサンプル出荷を開始する予定．

［写真10］Samsung社の46インチ型液晶ディスプレイ
本液晶ディスプレイは世界最大である．

　次に，LG.Philips LCD社は，視野角が176度の42インチ型TFT液晶ディスプレイを展示した（写真11）．本液晶ディスプレイでは，横電界方式を採用している．横電界方式とは，片側のガラス基板に対の電極があり，ここに電界をかけると液晶分子がガラス基板面と平行に動くことによって視野角を広げる技術である．本ディスプレイの画素数は1,280×768，色数は1,670万色，輝度は500cd/m²である．コントラスト比は600対1，応答速度は10ms．

［写真11］LG.Philips LCD社の42インチ型TFT液晶ディスプレイ
本ディスプレイの視野角は176度である．