Lineoの組み込みLinux，シャープ製Java/Linux搭載PDAに採用
6月4日～8日に開催された「JavaOne2001 Conference」で，シャープがJava/Linux搭載PDA機器（海外向け）を発表した．組み込みLinuxとしては，米国Lineo社の「Embedix」を，Java環境には英国Tao Group社の「intent」を採用している．
今回は，シャープの海外市場向けPDAのOSにEmbedixが採用された経緯などを，米国Lineo社スマートハンドデバイス関連事業開発担当ディレクタの楢崎浩一氏に聞いた．
米国Lineo社スマートハンドデバイス関連事業開発担当ディレクタの楢崎浩一氏
―― 最初に，シャープから話があったのは，いつ頃ですか？
2000年11月のCOMDEX/FALLです．Lineoのブースで，シャープの技術者から「LinuxとJavaを組み合わせて，ザウルス（シャープのPDA）のOSとして採用を考えている」とうかがったのが最初ですね．その前にも，会社のほうへ問い合わせがあったようですが，具体的な話を聞いたのは，この時が最初です．
―― PDA用OSとしては，Windows CEやPalmOS，EPOCなどを採用しているものが多いのですが，なぜLinuxが選ばれたと思われますか？
今後の拡張性を考慮して，オープン・スタンダードに近いLinuxを採用されたのだと思います．
―― Lineo社のEmbedixのどういう点が評価されたのでしょうか？
Lineo社が進めているビジネス・モデルが決め手だったと聞いています．ほかの組み込みLinuxのディストリビュータは，オープン・ソースを唱えており，カーネルの移植や保守で対価を得ています．また，真の意味でのリアルタイム機能をもっていませんでした．その点，Embedixは，Javaレイヤとの組み合わせ，アプリケーション，ミドルウェア，ツールの取りまとめができる商用の組み込みLinuxとして評価されたようです．
―― 仕様が決定したのは，いつ頃ですか？
2001年の1月から2月にかけてです．3ヵ月後の2001年5月に，ほぼ完成しました．日本法人のリネオは，長野県塩尻市にある開発センタで，Lineo社向けに携帯端末やPDAなどのソフトウェア開発を行っています．ユナイテッドシステムエンジニア（日本法人であるリネオの前身．2000年5月に米国Lineo社と合併した）のころから組み込み機器開発を行っており，Unix系OSも含めてノウハウを持っています．短期間で開発できる要素があったのです．
―― どのようなライセンス契約なのでしょうか？
各ユニット1台ごとにライセンス料が発生します．一般的な契約形態です．
―― 今回のPDAは日本でも発売されるのでしょうか？
私の口から，何ともいえません．シャープの戦略次第でしょう．
―― 組み込みJavaとしてintentを選んだのはなぜですか？
シャープの意向です．intentを発売しているTao社は，以前からシャープと付き合いがあったようです．Lineo社もTao社と提携しています．このことも，Embedixが採用された理由の一つかもしれません．
―― いままでザウルスのCPUは，シャープ独自のものでしたが，移植は難しくありませんでしたか？
今回のPDAでは，2種類のモデルがあります．StrongARMを採用したハイエンド向けと，ARM7コアを使ったチップセットを採用したローエンド向けです．移植がむずかしい，ということはありませんでした．
―― PDA向けEmbedixについて，今後はどのような展開を予定していますか？
マーケティングなどを含めて，このPDAを普及させる活動を進めているところです．Palm OSやWindows CEを搭載したPDAと比べると後発になります．OSに組み込みLinuxを採用しているというだけでは，ビジネスに結びつきません．まだ詳しいことは話せませんが，来月（2001年7月）中にもJavaがらみで，アプリケーションやレイヤの概念にとらわれない奇想天外なアプローチを紹介できると思います．
リネオのホームぺージ
http://www.lineo.co.jp/
組み込みネット編集部 猪之鼻 博隆
関連情報
・6.4 ACCESS，ブラウザ「NetFront」をシャープ製Java/Linux搭載PDAに移植
・5.17 Lineo，マルチCPU，DSP対応のリアルタイムOSを発売
・5.1 Lineo社，Linux2.4.2カーネル採用の組み込みLinuxと開発環境を発売
・4.18 Lineo社とMetrowerks社，共同でMPC8260用開発ツールを提供
