プロセッサ最新テクノロジ2015 シリーズ9
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2016年3月24日
5V動作対応で、高い耐ノイズ性と堅牢性を発揮
モータ駆動に最適なNXPセミコンダクターズのKinetis Eシリーズ
家電機器から産業機器までさまざまな機器でモータが用いられており,マイコンのモータ制御アプリケーションは急速に増加している.その中で,家電機器のモータ制御アプリケーションではそれほど高い演算性能は要求されない代わりに,低コストや堅牢性に対する要求は強い.近年ではロジックLSIの低電圧化に対応して,マイコンのI/Oでも5Vが使われることは次第に少なくなり,マイコンの動作電圧も3Vが標準的になってきた.しかし,家電機器のモータ制御アプリケーションでは,耐ノイズ性を高められる5V動作マイコンのニーズが高い.今回は,5V動作対応でモータ駆動に最適なKinetis Eシリーズの新製品についてお話を伺った.
執筆:宮﨑 仁
プレゼントの入り口はは文末にあります.
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NXPセミコンダクターズ マイクロコントローラ製品統括部 喜須海 統雄 氏(左) | NXPセミコンダクターズ アプリケーション技術本部 永井 克俊 氏(中) | NXPセミコンダクターズ マイクロコントローラ製品統括部 喜須海 統雄 氏(左) アプリケーション技術本部 永井 克俊 氏(中),渥美 勝浩 氏(右) |
1.モータ駆動に最適なKinetis Eシリーズ
MPU,MCUを中心に世界でも有数の半導体メーカとして知られていたフリースケールは,2015年12月にNXPセミコンダクターズと経営統合し,新生NXPのラインナップがさらに充実した.中でもARM Cortex-MコアのKinetisシリーズは,2010年の発売以来ラインナップの拡張を続け,現在は約1,000種類の品種をもつ業界最大のラインナップとなっている.
ここでKinetisファミリを概観しておこう.以下()内はCortex-Mのコアの種類.
・Kinetis K(M4)高性能/高機能
・Kinetis L(M0+)超ローパワー
・Kinetis E(M0+)5V動作
・Kinetis V(M7/M4/M0+)モータ制御/電力変換
・Kinetis M(M0+)電力計測
・Kinetis W(M4/M0+)ワイヤレス通信
このうち,Kinetis K/L/Eなどは標準マイコンとして,Kineis V/M/Wなどは特定用途向けのASSPマイコン製品としての位置付けとなっている.
2013年発売のKinetis EシリーズKE0xZは,5V動作(動作電圧2.7〜5.5V)の耐ノイズ性と堅牢性,Cortex-M0+コアの低価格と電源効率が特長で,家電機器などの用途に好評だ.特に,これまで5V動作の8〜16ビット・マイコンを使用していたユーザにとっては,低コストを維持しながら,将来の発展性が期待されている,そのEシリーズに新たにKE1xF,KE1xZが開発されている.
開発中のKE1xF(図1)はCortex-M4F搭載.2台の三相モータを同時に制御できるPWM*を搭載している.従来製品のKE0xZに比べてCPUコア,動作周波数,メモリ容量が大幅に強化されるとともに,各種機能も大幅に強化されている.特長は,160MHz動作のCortex-M4F(DSP,FPU内蔵)で8KB命令/データ・ キャッシュ内蔵),内蔵フラッシュメモリは最大512KBでECC付き,内蔵SRAMは最大64KBでECC付き,EEPROM内蔵,ブートROM内蔵,信頼性(ECC付きメモリ,カスタマ・コード保護機能,IEC60730対応の安全機能),アナログ機能,タイマ/PWM機能,耐ノイズ性の強化など改良が行われているようだ.
* PWM=Pulse Width Modulation:パルス幅変調方式
図1 Kinetis KE1xFのブロック図
もう1種類のKE1xZはCortex-M0+をベースとする72MHz動作のシリーズだ.1台の三相モータを制御できるPWM*を搭載している.従来製品のKE0xZに比べ,動作周波数の高速化(48MHz→72MHz),メモリ容量の拡大(フラッシュ最大128KB→256KB,SRAM最大16KB→32KB)と強化を図った.特長としては信頼性(ECC付きメモリ,カスタマ・コード保護機能,IEC60730対応の安全機能),アナログ機能,タイマ/PWM機能,耐ノイズ性の強化などの改良に加えて,25チャネルTSI(タッチ・スクリーンI/F)を搭載して家電機器のユーザ・インターフェースに適している(図2).両シリーズともサンプルは2016年第2四半期の予定だという .
図2 Kinetis Eシリーズのラインナップ
2.Kinetisファミリの開発環境
次にツールやライブラリを概観する.Kinetis Software Development Kit(Kinetis-SDK)は,Kinetis全シリーズ対応の開発ツール・キットで,リアルタイムOS(RTOS),ドライバ,ミドルウェア,通信プロトコル・スタックなどが階層的に構築されており,下位層のHAL(Hardware Abstraction Layer)でハードウェアの違いを吸収することによって,上位層の共通化を可能にしている.ツールチェーンとしては,IARのEWARM,ARMのKeil,AtollicのTrueSTUDIOなどの使い慣れたものを選択できる.さらに,GUIによって内蔵モジュールの設定を簡単化し,必要なドライバを自動生成するProcessor Expert Softwareをプラグインとして利用できる.
また,Embedded Software Motor Control and Power Conversion Libraries(図3)はモータ制御のソフトウェア開発を強力に支援する.統一されたAPIをもつ基本ファンクション(GFLIB),モータ制御(GMCLIB:三相モータ制御に必要なベクトル変換,パーク演算,クラーク演算など基本的な機能),アドバンスト・モータ制御(AMCLIB:センサレス・モータ制御などの複雑なモータ制御向けのライブラリでGMCLIBと組み合わせて使う),基本演算(MLIB),パワー変換(PCLIB)などのライブラリから構成され,アプリケーションを簡単に実現できる.
図3 Embedded Software Motor Control and Power Conversion Libraries
3.Kinetisファミリの開発用ボード
Kinetisファミリの開発用ボードとしては,Tower System(写真1)とFreedom開発プラットフォームの2種類が提供されている.Tower Systemは,コネクタをもつelevatorボードを両サイドに置き,高機能の開発用ボードを積み上げるように接続していく.Kinetisファミリだけでなく,NXPのハイエンド製品であるi.MXアプリケーション・プロセッサやQorIQマルチコア・プロセッサなど多くの製品が対応している.また,モータ制御ボードや無線通信モジュールなどの周辺ボードも数多く用意されており,大規模なシステムでも迅速に組み上げることができる.
写真1 Tower System
Freedom開発プラットフォームはKinetisマイコンを手軽に使ってみたいときに最適な小型,低価格の開発ボードだ.センサなどの周辺ボードも用意されており,すぐに開発を始められる.ボード上のコネクタはArduinoと互換性があり,Arduinoのシールドも利用できる.開発中のFreedom開発プラットフォームのFRDM-KE15Zを見てみよう(写真2).開発環境とはUSB接続で電源も供給される.また6軸センサ,タッチセンサ,3色LEDも搭載.このボード単体でも多様なアプリケーションに利用できそうだ.
写真2 KE15Zを搭載したプラットフォーム(FRDM-KE15Z)
家電から産業機器まで多彩な要求に対して,Kinetis全体のラインナップを充実させていく新生NXPセミコンダクターズ社の今後の動向に期待したい.
------------ 第9話 終了 ------------
プレゼントはこちらから
https://cc.cqpub.co.jp/system/enquete_preview/490/
アンケートに答えていただいた読者に,
低電圧三相PMSMモータを制御できるKinetis KV31搭載の開発キットをプレゼントします(5名様).
キット価格 $105(USD)相当! もちろんモータ付き.
プレゼントは下記の3つで構成されています
①FRDM-KV31F ($20)
Kinetis KV3xファミリ Freedom開発プラットフォーム
②FRDM-MC-LVPMSM ($50)
低電圧三相PMSMモータ制御向けのFreedom開発プラットフォーム
③FRDM-MC-LVMTR ($35)
Freedom開発プラットフォーム向け低電圧三相モータ
Linix 45ZWN24-40 Motor
①上記のFreedom開発プラットフォームFRDM-KV31Fの内訳です.↓
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インターフェース誌 巻頭企画プロセッサ・メーカにテクノロジ・シリーズの
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