プロセッサ最新テクノロジ2016 シリーズ11

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2016年7月19日

ARM9の置き換えから最新の超低消費電力アプリケーションまで

マイコン感覚で手軽に高性能が得られるNXPのi.MX 6UltraLite

 NXPセミコンダクターズ(以下NXP社)のi.MXはARMコアを中心にキャッシュや各種の周辺機能を集積したアプリケーション・プロセッサだ.現在中心となっているi.MX 6シリーズは,Cortex-A9のシングル/デュアル/クワッドコア製品をラインナップし,電子書籍など2Dグラフィックス向けの低消費電力アプリケーションから,マルチメディア機器など2D/3Dグラフィックス向けの高性能アプリケーションまで幅広い用途をカバーしている.
 さらに2015年には,i.MX 6UltraLiteファミリとi.MX 7シリーズを発表している.i.MX 6UltraLiteはCortex-A9よりもコンパクトで新しいCortex-A7コアを採用し,これまでにない小サイズと超低消費電力を実現した.また,i.MX 7シリーズはシングル/デュアルコアのCortex-A7とCortex-M4を組み合わせたヘテロジニアス・マルチコアを採用し,超低消費電力と高性能を両立している.今回は,このうちi.MX 6UltraLiteを中心に同社の大林氏にお話しを伺った.
執筆:宮﨑 仁

 

 

 

NXPセミコンダクターズジャパン 株式会社 マイクロコントローラ製品統括部  大林 久高 氏


 

1.幅広い用途で使われているアプリケーション・プロセッサ

  アプリケーション・プロセッサというと,携帯電話,スマートフォンやタブレットで使用されている印象が強いが,それだけがアプリケーション・プロセッサの用途ではない.マルチメディア,ウェアラブル,ホーム・ネットワークなどの民生向け,カーナビ,ドライブ・レコーダ,メータ・クラスタなどの車載向け,IoTゲートウェイ,監視カメラ,エネルギ管理システム,デジタル・サイネージ,自動販売機,指紋認証,工場などのヒューマン・マシン・インターフェース,テレビ会議システム,介護ロボット,ベッドサイド・モニタなどの産業向けまで,幅広い用途で活用されている.

 NXP社のi.MXシリーズは,特に車載や産業の市場で高い支持を受けてきたアプリケーション・プロセッサ製品だ.その大きな理由として,i.MXシリーズがもつスケーラビリティ,高信頼性,容易な開発という三つの特長がある(図1).


図1 i.MXシリーズの三つの特長

 

 スマートフォンのようにライフサイクルが短く少品種を多量に生産する分野と違って,車載や産業の市場では長期間にわたっての供給と,多品種生産への対応が要求される.i.MXシリーズは,その要求に応える高い水準を保っている.

 スケーラビリティについては,シングル/デュアル/クワッドコア製品を展開し(図2),同じアーキテクチャで幅広い処理性能に応えられる.さらに,同じコア数で高性能指向のPlusと省電力指向のLiteを用意するなど,よりきめ細かい品種選択ができる.


図2 i.MXプロセッサのラインナップ

 

 主な品種はピン・コンパチブルでハードウェア・レベルで直接の置き換えが可能だ.また,ソフトウェア・レベルでは,同じシリーズ内のすべての品種について互換性を持たせている.  信頼性については,産業機器向け製品は10年,車載向けは15年の長期供給保証プログラムを提供.また,車載市場で培った技術を生かした高品質を実現している.

 容易な開発については,ARM向けの充実したエコシステムの組み合わせによって,初めてのユーザでも簡単にシステムの開発を始められる.特にi.MXシリーズの開発に必要な情報はNXPのWebサイトで公開しており,誰でも容易にアクセスできる.個人ベースでの開発にも手軽に活用できるのは大きな特長と言えるだろう. 
i.MX 6UltraLiteのドキュメントページ
i.MX 6UltraLiteのツールページ

 

2.i.MX 6UltraLiteの概要と活用法 

 i.MX 6シリーズ(図2)は,2012年にシングルコアのi.MX 6Solo,デュアルコアのi.MX 6Duali.MX 6DualLite,クアッドコアのi.MX 6Quadが量産を開始し,2015年にはCortex-A9コアとCortex-M4を組み合わせたヘテロジニアス・アーキテクチャに対応したi.MX 6SoloX,グラフィックス処理性能をi.MX 6Dual/6Quadに対して50%アップしたi.MX 6DualPlusi.MX 6QuadPlusを発表し,ラインナップをさらに充実させた.

 最新製品i.MX 6UltraLiteは,Cortex-A7をベースとし,シリーズ最小のサイズと低消費電力を実現した.従来のi.MX 6シリーズとはソフトウェア互換でLinux OSや各種のミドルウェアも活用できる.さらにマイコンと同様,サードパーティ製のRTOSも活用可能となっている.

 車載分野では,ビデオやグラフィックスのエンジンを搭載したアプリケーション・プロセッサが主流になっているが,シンプルで安価なプロセッサを求める顧客にはミス・マッチとなっている.i.MX 6UltraLiteは,このような顧客の要求に最適で使い易い製品になっており,DCM(Data Communication Module), 高精度ロケーター,V2X(路車間,車々間通信),ゲートウェイ,スマートアンテナ(アンテナの指向性を変えられる)などのプロセッサとして採用されはじめている.

 また,従来のi.MX 6シリーズが1〜1.2GHzの最大動作周波数なのに対して,このi.MX 6UltraLiteでは最大動作周波数を528MHzに抑えている.これは,従来ARM9,ARM11など旧世代のアプリケーション・プロセッサを使ってきたユーザや,フラッシュ内蔵マイコンを使ってきたユーザにとって,最も容易にステップアップできることを考慮した仕様だという.数百MHzクラスのボード設計・実装技術にくらべて,GHzクラスになると難易度が大きく上昇してしまうためだ.

 このi.MX 6UltraLiteは,そのようなユーザがスムースに移行を進めるのに最適な性能と機能をもたせたもので(図3),アプリケーション・プロセッサを初めて採用するユーザにぜひ使ってほしい製品だ.



図3 i.MX 6UltraLiteのブロック図

 

 i.MX 6UltraLiteについては,ベース・ボードとCPUモジュールで構成されるコンパクトな開発プラットフォーム(MCIMX6UL-EVKB)を販売している(図4).ソフトウェアについても,i.MXシリーズは長年にわたるLinuxの実績をもち,使いやすいBSPを提供している.


図4 i.MX 6UltraLiteを搭載した評価キット(MCIMX6UL-EVKB

 

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-- 以上

 

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