プロセッサ最新テクノロジ2016 シリーズ13
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2016年9月13日
アナログ機能と使いやすさを徹底的に追及 センシングやIoTに最適なサイプレスの PSoC Analog Coprocessor
日本サイプレス株式会社(以下:サイプレス)のPSoCはプログラマブル・ディジタル,プログラマブル・アナログ,マイコンの三つの要素を1チップに統合したユニークなデバイスだ.最近ではCortex-M0/M0+コア搭載のPSoC 4,Cortex-M3コア搭載のPSoC 5LPなど,ARMアーキテクチャの32ビット製品が主流となっている.三つの要素のどれに力点を置くかによって,ディジタル・リッチなデバイス,アナログ・リッチなデバイス,マイコン・リッチなデバイスを作り分けている. 今年の6月に発表したPSoC Analog Coprocessorは,センサ信号の処理・収集に特化したアナログ・リッチな新製品で,システムのメイン・マイコンと組み合わせるサブ・マイコンにも最適だ.今回は,このPSoC Analog Coprocessorについて同社の米田 理之氏にお聞きした..
執筆:宮﨑 仁
Cypress Semiconductor マイコン事業部 プロダクトマーケティング 米田 理之 様
1.アナログ コプロセッサの位置付け
PSoCは,FPGA/PLDに似た「プログラマブル・ディジタル・ブロック」,チップ上で接続や機能の選択が可能なOPアンプやアナログ・マルチプレクサなどをもつ「プログラマブル・アナログ・ブロック」,CPUコア/フラッシュメモリ/SRAM/ペリフェラルからなる「マイコン」の三つの要素から構成される.サイプレスでは,用途に応じてこの三つの要素のバランスを工夫して,さまざまな製品を作り出している.
IoTの進展とともに,マイコン製品の需要はさらに急増すると考えられる.このような用途では,温度/光/位置/速度/加速度などさまざまなセンサからの情報を効率良く収集する機能が特に重視される.それに対応して,センサ信号の処理・収集に特化した新しいPSoCとして2016年に発売したのがPSoC Analog Coprocessorだ.
PSoC 4と同じCortex-Mコアを採用し,さらにセンサ信号の処理・収集に必要なアナログ機能に力点を置いたきわめてアナログ・リッチなデバイスだ. ディジタル機能やマイコン機能は最小限に抑え,パッケージも3.7mm×2mmのWLCSPをはじめとしてコンパクトにまとめている(写真1).
写真1 きわめてコンパクトなCSP(チップスケール・パッケージ)
ホスト・プロセッサと組み合わせるコプロセッサ,メイン・マイコンと組み合わせるサブ・マイコンとして利用したときに大きな力を発揮する(図1).
図1 PSoCとホスト・プロセッサの役割分担 左側のPSoC Analog Coprocessorがセンサ信号の処理・収集を一手に引き受ける.右側のホスト・プロセッサはデータを受け取るだけで,ソフトウェアも簡単にできる.
2.PSoC Analog Coprocessorの構成
PSoC Analog Coprocessorは,センサからのアナログ信号を扱うための「プログラマブル・アナログ・ブロック」,データの取り込みとディジタル処理を行うための「信号処理エンジン」,ディジタル信号の入出力を行う「I/Oサブシステム」の3つのブロックで構成される(図2).
図2 PSoC Analog Coprocessorのブロック図
プログラマブル・アナログ・ブロックには,最大38チャネルのセンサ信号から一つを選択するためのアナログ・マルチプレクサ(AMUX),センサ信号に増幅やフィルタリングなどのアナログ処理を加えるOPアンプや汎用アナログ・ブロック(UAB),アナログ電圧をディジタル値に変換する12ビット逐次比較型(SAR)ADC,その他のアナログ機能としてコンパレータ(CMP)や10ビット積分型ADC,CapSense用の電流出力DAC(IDAC)などの機能が含まれている.
マイコンに取り込む前のセンサ信号などを適切に処理するためのアナログ機能は,総称してアナログ・フロントエンド(AFE)と呼ばれる.一般的なマイコンはこのようなアナログ機能を備えていないので,外付けのアナログ回路が必要になる(図1あ).
図1のように,このアナログ・フロントエンドの部分をPSoC Analog Coprocessorに任せれば,個別のアナログ回路を作る必要はなく,基板占有面積や部品コストも節約できる.さらに,PSoC Analog Coproce ssorの内蔵アナログ機能はプログラマブルなので,センサなどの変更があっても基板パターンの変更やホスト・プロセッサのソフトウェア変更は不要だ.
PSoC Analog Coprocessorの代表的なアプリケーション例には,ガス・メータなどインフラ機器,冷蔵庫の霜取りセンサなど家電機器,心拍モニタなどウェアラブル機器がある.今後はIoTの進展とともに,アプリケーションはさらに拡大していくと考えられる.
3.PSoC Analog Coprocessorの開発環境 パラメータを自動設定
PSoC Analog Coprocessorの開発には,PSoC 3/PSoC 4/PSoC 5LP用の統合開発環境として定評のあるPSoC Creatorを使用できる.
PSoC Creatorは,PSoCのプログラマブル・ディジタル・ブロック,プログラマブル・アナログ・ブロックなどのハードウェア設計と,ソフトウェア設計を連動して実行できるツールだ.サイプレスのWebサイトから無償でダウンロードでき,アップデート・マネージャによって常に最新の状態を保つことができる.
デバイスで使用可能なハードウェア機能は,使いやすい機能ブロックの形で用意されている.その中から使いたいブロックを選び,ブロック間を接続するだけで,白い紙に回路図やブロック図を描くように簡単にハードウェアを構成できる(図3).
図3 PSoC Creator
各ブロックの詳細な機能やパラメータは,グラフィカルなツールを用いて簡単に設定できる.増幅のゲインやフィルタの特性を指定すれば,それに必要なパラメータを自動的に設定してくれるので,アナログ設計技術がなくてもハードウェア回路を適切に設定できる.さらに,ハードウェア設定プログラムやドライバのサンプル・プログラムも用意されているので,PSoC Analog Coprocessorに必要なソフトウェアをほとんど自動的に生成することができる.
さらに,サイプレスではPSoCを実際に使用して評価するための手軽な開発キットとして,低価格のパイオニアキットを用意している.PSoC Analog Coprocessor用のパイオニアキットは,環境光センサ,温度センサ,湿度センサ,焦電赤外線センサ,電磁式近接センサなどのセンサを搭載しており,複数のセンサを用いたセンシング・システムを簡単に評価できる(写真2).
写真2 PSoC Analog Coprocessor搭載のパイオニアキット (CY8CKIT-048),$49.
さまざまなセンサを簡単にマイコンに接続して,センシングやIoTなどのアプリケーションを実現できるPSoC Analog Coprocessorは,これからの時代に活用される注目のデバイスと言えるだろう.
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<<<製品のお問い合わせは下記の販売代理店へどうぞ>>>
■富士通エレクトロニクス株式会社 TEL:045-415-5828
■株式会社アルティマ TEL:045-476-2195
■東京エレクトロンデバイス株式会社 TEL:045-443-4035
■伯東株式会社 TEL:03-3355-7607
-- 以上
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この記事に関するお問い合わせ先
日本サイプレス株式会社 http://japan.cypress.com/