電動車両技術と自動運転技術が創る2020年代のクルマ社会 ―― 東京モーターショー2013
日本最大の自動車展示会「第43回東京モーターショー2013」の報道関係者向け公開が2013年11月20日~21日に実施された(写真1).この報道関係者向け公開は,11月23日~12月1日の一般公開に先駆けてイベントをプロモーションするためのものであり,東京モーターショーでは恒例の行事となっている.
写真1 東京モーターショーの会場入口風景
2011年の前回に続き,東京ビッグサイトで開催されている.2013年11月20日に撮影した.

報道関係者招待日は一般公開日に比べると混んでいないものの,自動車メーカ各社による記者発表会が分刻みで実施される(写真2).このため,記者発表会を実施しているメーカの展示ブースは大混雑で,記者発表会が終了した後もしばらくは混雑が続く.報道関係者に用意されたプレス・ルームも大混雑で,プレス・ルームでは陣取り合戦が繰り広げられていた(写真3).
写真2 記者発表会のようす
本田技研工業の例.なお今回同社は,1ブランド当たりで最大の面積で展示ブースを構えた.

写真3 大混雑するプレス・ルーム
一見すると空席に見える場所でも,近づくと机または座席に荷物が置いてある,ということがしばしばあった.

そんなわけで一足早く,東京モーターショーの概要をお届けしよう.本レポートでは自動車業界の最近の課題である「環境」と「安全」に絞って国内自動車メーカの主な展示内容を紹介する.具体的には電気モータを使った自動車技術(二次電池自動車,燃料電池自動車など)と,交通事故を防いだり交通事故による損傷を軽減したりする技術である.4輪車ではトヨタ自動車,本田技研工業,日産自動車,富士重工業の注目車両と,2輪車ではヤマハ発動機とスズキの注目車両を紹介する.
●トヨタ:2015年発売予定の燃料電池乗用車
トヨタ自動車は,2015年に燃料電池自動車の市販を始める予定である.そのコンセプト・モデルである燃料電池乗用車(セダン・タイプ)「TOYOTA FCV CONCEPT」を出品した(写真4).「TOYOTA FCV CONCEPT」のボディは専用設計である.寸法は全長4,870mm×全幅1,810mm×全高1,535mm,ホイール・ベース2,780mm.乗車定員は4名.最高速度は時速170km,航続距離は約700km(JC08モード)である.
写真4 2015年に市販を始める燃料電池乗用車(セダン・タイプ)のコンセプト・モデル「TOYOTA FCV CONCEPT」

パワー・ユニットは水素燃料電池で,新設計の燃料電池スタックを搭載した.出力密度は1リットル当たり3kWと,従来のプロトタイプである「トヨタ FCHV-adv」に比べて2倍以上に強化された.出力は100kW.燃料の水素タンクは70Mパスカル(Pa)の高圧ボンベ2本で,いずれも床下に配置してある(写真5,写真6).
写真5 燃料電池乗用車「TOYOTA FCV CONCEPT」のシャシーが見えるようにした展示

写真6 燃料電池乗用車「TOYOTA FCV CONCEPT」のシャシーを説明した図面

●トヨタ:ハンドルのない未来のクルマ
トヨタ自動車は,ハンドルがなく,運転者が体重を移動させて前後左右に操作するコンセプト・モデル「TOYOTA FV2」を出品した(写真7).「TOYOTA FV2」は1名乗り.鶏卵を横にしたようなボディの前後に小径の2輪,後方左右に大径の2輪を取り付けている.
写真7 運転者が体重を移動させて前後左右に操作するコンセプト・モデル「TOYOTA FV2」

ボディの前方から上方にかけて透明なシールドがあり,駐車時はシールドが閉じている.このときに寸法は全長3,000mm×全幅1,600mm×全高990mm.走行時はシールドを開き,斜めに立てる.このときは全高が1,780mmとなる.ここで運転者はまたがるように車両に乗り込み,立ったままで体重を移動させることで車両を操作する.
「TOYOTA FV2」は未来のクルマ社会をイメージした研究色の強いモデルで,市販を意識した車両ではない.カバーのフロント・ガラスには人工現実感技術による映像が映し出される.なお,「TOYOTA FV2」の操作を模擬体験できるスマートフォン用アプリケーションをトヨタ自動車が無料配布している.