次世代光ファイバ通信,狙いは400Gビット/秒~1Tビット/秒 ―― Agilent Measurement Forum 2013(AMF 2013)

福田 昭

tag: 組み込み 半導体 実装

レポート 2013年7月17日

●100Gビット/秒をディジタル信号処理で実現

 講演会場では,合計で54件の技術講演が設けられていた.本レポートでは,興味深かった基調講演の概要を紹介する.超高速の大容量光通信(光ファイバ通信)技術に関する講演である.「400G/1Tbpsに向けた超高速大容量光通信技術の最新動向」と題して,NTT未来ねっと研究所 フォトニックトランスポートネットワーク研究部 上席特別研究員である宮本 裕氏が講演した.

 ここで述べる超高速大容量光通信とは,モバイル系や加入者系などの無線通信や有線通信などのバックボーンとなる「コアネットワーク(長距離基幹網)」を指す(写真9).高度情報通信社会を支えるインフラストラクチャであり,高速化と大容量化を常に要求されてきた(写真10).

 

写真9 日本国内における情報通信ネットワークの構成

 

写真10 Ethernetと長距離光通信(OTN;Optical Transport Network)の進展

 

 宮本氏はまず,現在の日本における最先端技術である,100Gビット/秒(1波長当たり)の高速大容量光通信技術について説明した.すでに実用化が始まっている技術である.波長がわずかに異なる(周波数換算で約50GHzの違い)数十チャネルの信号を多重化し,光ファイバを経由して送受信する.「光波長多重方式」と呼ばれる伝送方法である.

 光ファイバ通信では1波長当たりの伝送速度を高めようとするときに,主に二つの要因が伝送距離を制限する(写真11).一つは,波長分散である.光波長の違いによって光パルスの進行速度がずれ,信号波形を歪ませる.波長分散では,伝送速度の2乗に反比例して伝送距離が短くなる.

 

写真11 波長分散と偏波モード分散の影響

 

 もう一つは,偏波モード分散である.光ファイバに加わる応力の変化により,直交する偏波面で進行速度が変動し,信号波形が歪む.伝送速度が40Gビット/秒を超えると偏波モード分散による波形劣化が著しく増大するとされる.

 これらの分散をディジタル信号処理技術でリアルタイムに補償し,無線通信と同様の周波数検波(コヒーレント検波)を実現することで,伝送速度の向上と長距離伝送を両立させた(写真12).この技術は「ディジタル・コヒーレント光伝送技術」と呼ばれる.1波長当たり127Gビット/秒で80波長の光波長多重方式で約8Tビット/秒のデータ伝送を400kmを超える長さの光ファイバで実施し,安定した伝送を可能にした.

 

写真12 100Gビット/秒(1波長当たり)を実現するディジタル・コヒーレント伝送技術の概要

 

●400Gビット/秒への挑戦

 さらに先の光ファイバ通信技術として,400Gビット/秒(1波長当たり)のディジタル・コヒーレント光伝送技術が開発中である.これは,次世代のEthernetである400Gビット/秒の規格が2015年ころには固まると見込まれていることに対応している(写真13).

 

写真13 400Gビット/秒のEthernet標準化の動向

 

 100Gビット/秒(1波長当たり)のディジタル・コヒーレント光伝送では,主に受信側でディジタル信号処理技術を活用して伝送速度を向上させていた.400Gビット/秒(1波長当たり)のディジタル・コヒーレント光伝送では,送信側の信号処理技術が複雑かつ重要になるとする.具体的には,多値化をさらに押し進める.

 100Gビット/秒(1波長当たり)のディジタル・コヒーレント光伝送では,2ビット/Hzの多値化技術を採用していた.これに対し,400Gビット/秒(1波長当たり)の実現には,8ビット/Hz以上の多値化技術が必要となる(写真14).

 

写真14 400Gビット/秒(1波長当たり)のディジタル・コヒーレント光伝送技術

 

 実際に456Gビット/秒(1波長当たり)の信号を224波長で波長多重し,102.3Tビット/秒を240km伝送する超高速大容量伝送を実験によって達成したことを示した(写真15).

 

写真15 456Gビット/秒(1波長当たり)を224波長の波長多重伝送で240km伝送した実験の概要

 

ふくだ・あきら
フリーランス・テクノロジ・ライタ
http://d.hatena.ne.jp/affiliate_with/

 

«  1  2
組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日