見直される燃料電池車,2015年に市販を開始へ ―― FC EXPO 2013
●水素インフラの構築が最も困難な課題
FCVの最大の課題は自動車本体ではなく,インフラストラクチャにある.ガソリン・スタンドに相当する「水素ステーション」を全国各地に設置しなければ,ガソリン車と同様の普及は見込めない.HySUTブースの説明員によると,ガソリン・スタンドを1基整備するのに必要が金額が5000万~1億円未満であるのに対し,水素ステーション1基を整備するのに必要な金額は数億円に上るという.
FCVの研究開発や実証実験などのために設けられた国内の水素ステーションは,2012年1月時点で16基.国内では水素ステーションをFCVの市販に先行して増やす.市販開始の2015年までには大都市(東京,愛知,大阪,福岡)を中心に約100基,FCVが本格的に普及を始める2025年までに約1000基に拡大する計画である(写真10).そして水素ステーションの安全確保とコスト低減を両立させるため,経済産業省は国土交通省・消防庁とともに水素ステーションに関連する規制の再点検を実施しようとしている(写真11).
なお,燃料の水素を危険(簡単に燃える,あるいは爆発する)と考える一般ユーザが少なくない.しかし実際には,取り扱い方が適正であれば,ガソリンと比べて水素は危険だとは言いづらい(写真12).もちろん水素はガソリンに比べると着火エネルギーが低く,燃えやすい.ただし,着火温度そのものは水素はガソリンよりも高く,その意味では発火しにくい.最も大きな違いは燃焼状態にある.ガソリンは引火すると爆発的に燃え広がる.これに対して水素は爆発しにくい.そして水素は非常に軽い気体(ガス)なので大気中に素早く拡散する.拡散すると燃焼が停止する.このため燃焼が継続しにくい.
水素の問題は漏れやすいことと,漏れを認知しにくい(無色無臭である)ことにある.この点には対策が必要となる.
ふくだ・あきら
フリーランステクノロジーライター
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