エンジニアの「外に出てみた」体験記(4) ―― チャンスをつかむためには準備が必要

名野 響

tag: 組み込み

コラム 2013年3月14日

 筆者は,社会人8年目の組み込みソフトウェア技術者です.愛知県で自動車関連の組み込みソフトウェアの開発を担当しています.趣味は釣り.2カ月に1回程度ですが,愛知県という地の利を生かして,静岡,福井,三重など,魚が豊富な海に足を伸ばしています.普段の仕事はそれなりに忙しく,残業して帰ることが多いため,平日はあまりプライベートな時間を確保できていません.趣味や社外活動は土日を中心に行っています.ただ,最近は育児に奮闘中のため,時間を確保するのに苦労しています(^^;


●きっかけは「テスト設計コンテスト」への出場

 社外活動を活発に行うようになったきっかけは,NPO法人ASTER(Association of Software Test Engineering;ソフトウェアテスト技術振興協会)主催のテスト設計コンテスト(以下,テスコン)への出場でした.このコンテストは,課題として与えられる仕様書を基にテスト設計を行い,その成果物(テスト設計仕様書など)の良し悪しを競い合うものです.社外の知り合いからお誘いを受けて参加しました.社外活動への参加は,開発やテストのワークショップ(「組込みシステム技術に関するサマーワークショップ(SWEST;Summer Workshop on Embedded System Technologies)」や若手エンジニア向けワークショップ「WACATE(Workshop for Accelerating Capable Testing Engineers)」),地域の技術コミュニティの勉強会(「ソフトウェアテスト技術者交流会(TEF;Testing Engineer's Forum)」)など,それまでにも多少行っていましたが,主催者や発表者としての参加ではありませんでした.そのため,自身の考え方や技術を社外にアウトプットする機会は,このテスコンが初めてでした.

 テスコンへの参加を決めたものの,日中は仕事,締め切りまでは残り2週間,チーム・メンバは関東在住(顔を合わせての打ち合わせはほとんどできない),という制約の中での挑戦でした.また,仕事でテストを担当することはあるものの,テスコンで使えるようなノウハウは持っていなかったため,本当にやりきれるのだろうか?...と,とても不安でした.

 最初の1週間は知識の詰め込みでした.仕事中にプライベートな作業を進めるわけにはいかないので,休憩時間や通勤電車の中でテスト設計に関する文献を読み込み,疑問点があれば帰宅後にチーム・メンバとメールでディスカッションを行いました.普段,筆者はフットワークが悪く,周りに迷惑をかけてしまうことが多々あるのですが,この時ばかりは,短納期というプレッシャと,チームで挑戦している面白さから,寝る間も惜しんで楽しく作業を進められました(仕事に影響が出るとまずいので,徹夜はしなかったが...).後半の1週間はメンバと分担して成果物を作成しました.成果物のレビューはすべてオンライン.メールやボイス・チャットを使って,締め切りギリギリまで思いをぶつけ合いました.顔を付き合わせなくても何とかなるものです.便利な世の中です.

 努力したかいがあり,テスコンでは大賞を受賞することができました(写真1).そして賞以上にうれしかったのが,周囲からのフィードバックでした.テスト設計に対する自分たちの考え方を「見える化」したことで,技術コミュニティの知り合いやテスト業界で著名な方々からいろいろな意見をいただけたり,テスト技術に関するディスカッションを行う機会を,テスコン以降,たくさん得ることができたのです.

 

写真1 ソフトウェア・テスト・コンテストの様子
これは優勝した翌年のJaSST'12のときの写真である.前回の優勝チームとしてプレゼンを行った.

 

 

●がむしゃらに挑戦

 テスコンへの参加をきっかけとして,テスコン参戦記の発表や,テスト設計に関する初心者向けセミナ開催など,社外活動のチャンスをたくさんいただけるようになりました.それまでセミナの主催者や発表者になったことは全く無かったため,依頼を受けるか否かとても悩みましたが,こんな機会はめったにない! やらなきゃ損! 当たって砕けろ! と思い,挑戦しました.発表に慣れていなかったり,勉強が不十分なところがあったりと,参加者の方から厳しいご意見をいただいたこともありました.でも,そういったフィードバックを前向きに受け止め,さらに勉強を進めて改善することで,自身の考えや技術力を高めることができると思っています.

 また,社外活動で知り合った方々からの紹介で,ソフトウェア・テストに関するシンポジウム「JaSST(Japan Symposium on Software Testing)」の実行委員になったり,派生開発に関する研究会「派生開発推進協議会(AFFORDD;Association For Facilitation Of Rational Derivational Development)」に参加するようになったりと,社外活動が活発になっていきました.

 

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