手巻きモータ・キットを使った「EVミニカート・レース」の開催を計画 ―― コイルの巻き方と制御プログラムが勝負を左右

Tech Village編集部

tag: 組み込み 電子回路

エレキ系DIY 2012年11月26日

●狙いはレースで技術力を競うこと

 市販されているカートとして,「レーシング・カート」があります.レーシング・カートは,『CQブラシレス・モータ&インバータ・キット』のモータを搭載するには,高速対応でボディ重量が重すぎるなどの問題がありました.そこで,開発中の『EVミニカート・キット』では,15km/h程度の速度に対応したボディを用意したいと考えています.きわめてシンプルなフレーム構造を採用した簡易型のカートです.モータ制御ソフトウェアの開発や回生手法のノウハウを実践的に学ぶことを念頭に置いています(写真2).

 

写真2 ミニカート・キットの試作車

 

 

 また,2013年11月か12月ころに,本カートとモータ・キットを使用した「レース」を開催できないかと考えています.これは,レースというよりも「コンテスト」といったほうがよいかもしれません.このコンテストは,モータ,インバータ/制御回路,使用電池,カート本体を規定し,

  • 航続距離(制限時間あり)
  • 規定コースでのラップタイム

を競います(レースの詳細は2013年3月ごろ発表の予定).

 

●何を競うのか?

 レースで競う技術上の主なポイントとして,次のものが予想されます.

  1. モータ・コイルの巻き方
  2. インバータ基板のFETの放熱方法
  3. インバータ制御ソフト(回生機能を含む)
  4. 転がり抵抗対策(タイヤ/ベアリング対策)
  5. 空気抵抗対策(カウル製作)

 つまり,車のレースというより,パワー・エレクトロニクスの技術力が勝敗を分けると考えています.

 例えばモータの「コイルの巻き方」で,何が変わるのでしょう.前述のように,コイルの巻き数が少ないほうが高速で回転します.しかし,その分だけ電流は多く流れます.電流が流れすぎるとコイルが発熱し,マグネット・ワイヤの絶縁皮膜(エナメル線のエナメル被膜)が燃えてしまうかもしれません.『CQブラシレス・モータ&インバータ・キット』では1mm径(標準)の導線が入っていますが,もっと太い線を採用するか,細い線を採用するか,また断面は円がいいのか,四角がいいのか,など,さまざまな検討の余地があります.

 コイルに電流をたくさん流すと,インバータ基板の駆動用FETが発熱します.キットで採用しているMOSFETは180℃以上になると壊れてしまいます.つまり,MOSFETでは放熱対策が重要です.キットのMOSFETにはヒートシンクが付いていないので,ヒートシンクなどの利用を考える必要があります.

 制御ソフトウェアは,インバータ制御のかなめです.坂道ではどうしても高トルクが必要ですし,レースに勝つためには高速回転させたいところです.しかし,過度な電流を流してMOSFETを壊したら元も子もありません.上位入賞を狙うのであれば,コースに対応した対策も重要でしょう.長い直線があるのか,コースの高低差(急勾配)がどれだけなのか,を考える必要があります.もちろんブレーキ時の回生エネルギーの活用も,インバータの制御ソフトウェアで対処できます.

 転がり抵抗は,クルマの燃費(電費)効率を考えるととても重要です.タイヤの空気圧や材質によって,転がり抵抗は大きく変わるといわれています.また,速度が上がっていくと空気抵抗も大きくなってきます.流線型のカウルを用意するのも,いいかもしれませんが,車重が重くなればそれはそれで不利です.また,操縦者の体重は軽いほど有利ですが,レースでは体重差を考慮したバラストによる調整を予定しています.このほか,運転技量もレースの結果を左右するでしょう.

 

●試作1号車はEmbedded Technology 2012でお披露目

 現在,来春の発売に向けて,試作車を製作している段階です.試作1号車は,2012年11月14日(水)~16日(金)にパシフィコ横浜(神奈川県横浜市)で開催されたEmbedded Technology(ET) 2012のCQ出版社ブースで展示しました.15km/h程度の速度で快適に走行することが確認できています.現在は,安全面やコストに配慮しながら,さらなる検討を進めています.

  • 乗車人数:1
  • ステアリング:アッカーマン方式(フロントシャフト直結/自転車ハンドル型)
  • サスペンション:なし
  • ブレーキ:後輪制動方式
  • 搭載電池:鉛電池2個(またはニッケル水素電池)

注:当該のカートは,栃木県高等学校教育研究会工業部会でものづくり教材として開発した電動カートの標準車をベースとして,(株)ミツバ SCR+プロジェクトなどと共同で開発しているものです.

 

●試作カートの走行動画

 試作カートの走行の様子を撮影した動画をYouTubeにアップしました(図2図4).

 

図2 ブラシレス・モータ・キット活用事例カート1

 

 

図3 ブラシレス・モータ・キット活用事例カート2

 

 

図4 ブラシレス・モータ・キット活用事例カート3

 

 

●参考URL
(1) CQ出版社;『CQブラシレス・モータ&インバータ・キット』のWebページ,CQ出版WebShop.
(2) CQ出版社;実習・モータ&インバータの原理と組み立て(2013年1月24日~25日開催),CQエレクトロニクス・セミナ.
(3) Tech Villge編集部;はんだ付けとコイル巻きでモータ技術の神髄を体感 ―― CQエレクトロニクス・セミナ「実習・モータ&インバータの原理と組み立て,Tech Village,2012年8月14日. 

 

«  1  2
組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日