ロータリ・エンジンを開発した町工場に見る技術者魂 ―― 日東工作所 更谷 雄三氏の講演より

久保 幸夫

 2012年10月23日,大阪・日本橋のものづくり拠点「ROBOBA」(大阪市浪速区)にて,日本橋でんでんタウンロボット連絡会注1の例会(勉強会)が行われました.その中で,ラジコン模型用小型バンケル型ロータリ・エンジンを開発した,日東工作所 更谷 雄三氏の講演がありました.

 

注1:日本橋でんでんタウンロボット連絡会とは,ロボットやものづくりの市場活性化や情報交換などを目的として2006年9月に発足した会である.当初は大阪日本橋界隈のロボット関連企業や販売店がメンバの中心だったが,その輪は近隣の府県に広がっている.月1回の定例会では,講師を招へいしての勉強会や情報交換などを行っている.また,ROBOBAの運営や,ロボットおよび組み込みマイコン技術の勉強会などの企画を通じて,技術の向上や啓蒙活動,地域の活性化を図っている.

 

 ロータリ・エンジンと言えば,自動車メーカであるマツダのRX-7などが思い浮かびます.その開発の苦労と成功は,NHKの「プロジェクトX ~挑戦者たち~」でも放映されたので,ご存じの方も多いかと思います.マツダのロータリ・エンジンはバンケル型と呼ばれ,おむすび型のロータが楕円軌道を描いて回転するタイプです.それと同じタイプのロータリ・エンジンをわずか20ccの模型用エンジンとして開発し,販売しているのが,更谷氏です(写真1写真2).

 

写真1 20cc模型用ロータリ・エンジンのカット・モデル
裏にあるハンドルを回すと,ロータが回転する.

 

 

写真2 模型用ロータリ・エンジン
写真右が,20ccの模型用ロータリ・エンジン.写真左は,カルファルニア大学バークレー校の委託によって試作した超小型ロータリ・エンジン.

 

 

 技術や開発秘話をはじめとして模型用ロータリ・エンジンを搭載したラジコン・ヘリの実演もあり,非常に興味深い講演でした(写真3).そして講演の後半では,「なぜ町工場でロータリ・エンジンを開発することができたのか?」に話題が移りました.この中から筆者は,元気がなく空洞化が進む「ものづくり」の業界に共通した復活のヒントを見出すことができたように思います.そこで本稿では,更谷氏の講演の内容を,筆者の感想や補足を交えながら紹介したいと思います.

 

写真3 20ccの模型用ロータリ・エンジンを搭載するラジコン・ヘリの実演
屋内での実演なので,安全のためメイン・ロータは外してある.手前のバッテリとモータはロータリ・エンジン起動用.起動したロータリ・エンジンは十分にインパクトがあった.

 

 

●本業は治具(じぐ)の設計・製作

 日東工作所は大阪府東大阪市の町工場です.東大阪市は,東京の大田区と並ぶ,ものづくりの得意な中小企業の町として有名です.エンジン専業メーカかと思いきや,本業は治具(じぐ)の設計・製作を行う小さな町工場だそうです.模型用とは言えロータリ・エンジンの開発と聞けば,多くの開発スタッフがいるのかと思いがちですが,技術者は代表の更谷氏を含めて2名だけで,2人とも何でもこなす,いわば「多能工」だそうです.しかし,いくら優秀な多能工が2名いても,ほかにはない,だれもやっていない未踏分野を開発できたのには,何か秘訣(ひけつ)がありそうです.

 さて,治具とは,一般には耳慣れない用語かもしれません.少し本題からは外れますが,まずは筆者の昔話をしたいと思います.

 

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