クルマの航続距離とEV,プラグイン・ハイブリッドという存在 ―― EVよもやま話(2)
コラム 「プラグイン・ハイブリッド」と「レンジ・エクステンダ」
従来のハイブリッドEVの駆動系は,例えば従来型のPRIUSのように「エンジン:主」,「モータ:従」の関係となっている.つまり,エンジン駆動中心でモータがアシストする形式が多い(パラレル型ハイブリッドとよばれる).搭載する電池容量もそれほど多くなく(1.3kWh),電源からの直接充電機能はもっていない(電池への充電は,おもにエンジン走行時やブレーキ回生時に発電機/モータを回すことで得た電力を使う).よって電池容量もそれほど多くなく,コンセント/コネクタからの直接充電機能はもっていない.PRIUSはモータ走行(EVモード時)では2km程度しか走ることができない.
一方,プラグイン・ハイブリッドEVとは,一般に,電池への直接充電機能をもったハイブリットEVのことをいう.例えばPRIUS PHVでは,「モータ:主」,「エンジン:従」であり,電池容量も多く(5.2kWh),AC電源(100V/200V)からの充電機能を備えている.低速時や街乗り走行時ではモータ駆動(EVモード)で,電池容量が少なくなったときにエンジン駆動に切り替えHVモードとなる.高速安定走行時には発電モータにより充電する仕組みも備わっている.クルマの駆動系としては,モータとエンジンを併用する形となる.
また,レンジ・エクステンダとは,航続距離延長を意味する英語を語源とするもので,プラグイン・ハイブリッドEVの一種と考えてよいだろう.基本的にはEVだが,航続距離を長くするために,電池容量が少なくなると,発電機(エンジン)を回して電力を生成して蓄電する.エンジンは発電用にしか使わず,クルマの駆動系としてはモータのみが基本である.シリーズ型ハイブリッド・カーともよばれる.このタイプの市販車としては,米国で発売されているChevrolet Volt(シボレー・ボルト)がある.なお,OUTLANDER PHEVは,「EVモード」に加えて「HVモード」として「シリーズ・モード」と「パラレル・モード」の合計三つのモードをもつと発表されている.パラレル・モードとは,エンジン駆動にモータがアシストする方式というので,純粋なシリーズ型ハイブリッドとはいえない.
なお,ハイブリッド・カーの略称は,PHV(Plug-in Hybrid Vehicle)またはPHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)である.トヨタ自動車はPHVを使い,三菱自動車工業はPHEVを使っている.
うすい・たけのぶ フリーEVエンジニア