ドラえもんのひみつ道具などを現代の技術で体験してみよう ―― 日本科学未来館 企画展「科学で体験するマンガ展」
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組み込めないネット 2012年9月 7日
●見えない敵の正体を暴け!
「サイボーグ009」のコーナでは,暗い部屋で敵と対決します.じっとしていると縦に細長い光源しか見えませんが,視線を左右に揺らすことにより,敵の姿が現れます(写真9,写真10).
これは,人間が無意識に行う高速な眼球運動(Saccade;サッカードあるいはサッケードと呼ばれる)を利用したディスプレイ「サッカード・ディスプレイ」です.縦に並べた赤・緑・青のLEDが高速に点滅し,視線が動くことにより見ている人に2次元のイメージを知覚させます.LED列を振って残像で2次元イメージを表示する装置(POV;Persistent Of Vision)がありますが,このディスプレイはちょうどその逆です.LEDではなく,人間の視線のほうを動かすのです.さらにこのディスプレイは,視界の中で光ったものに視線が向くなどの反射をうまく利用しています.
この部屋では,銃声や物音もあちこちから聞こえてきます.これは,超音波を放射して可聴音を発生させるパラメトリック・スピーカによって実現されています(写真11).
●速すぎる動きを見やすくする
今度は壁に,ぐるぐる高速回転しているものがあります.肉眼では何が描かれているのか分かりません(写真12).
そこで,会場に設置してあるゴーグルを通して覗いてみると(写真13),高速回転していたものがまるでスローモーションのようにゆっくり回転しており,敵の正体が確認できます.ゴーグルの右側にあるツマミを左右に動かして調整すると,対象の回転スピードを変えることができます.さて,このゴーグルにはどんなしかけがあるのでしょう?
実は,ゴーグルの前には,高速に開閉するシャッタがあります.シャッタによって,連続して回転している対象の映像を間引くことで,高速回転する対象を見やすくできます.ツマミはシャッタの開閉間隔を調整するものであり,対象物の回転間隔とぴったり合わせられれば,あたかも対象が静止しているように見ることもできます.
このゴーグルは「ストップ・モーション・ゴーグル」と呼ばれており,既に,スポーツの分野などで球の回転方向を確認するためなどに活用されているそうです.