ユビキタスからM2M,IoTへ:すべての機器がネットワークにつながる日 ―― Device2Cloudオープンセミナ 2012
2012年8月8日,東京エレクトロンデバイス 新宿オフィス(東京都新宿区)にて,「Device2Cloudオープンセミナ 2012」が開催された(写真1).クラウドやセンサ・ネットワークなどに取り組む企業や関連団体のメンバが,M2M(Machine to Machine)やクラウド,IoT(Internet of Things)の概念や最新動向について講演した.主催はD2Cコンテスト実行委員会.
写真1 開会のあいさつを行うD2Cコンテスト実行委員会 実行委員長の成田 隆氏

●Las Vegasのホテルは既にセンサ・ネットワークを導入
新世代M2Mコンソーシアム 理事を務める東京エレクトロンデバイス 新事業推進部長の八幡 浩司氏は,M2Mやクラウド・サービスの事例を紹介した(写真2).M2Mはそもそも機器間通信を意味する用語であるが,近年,ネットワークに接続するあらゆる機器の通信や連携を総称するキーワードとして日本国内で使われている.新世代M2Mコンソーシアムは,農業や医療,流通などといった各種分野においてM2Mサービスを活性化するために通信事業者や機器開発事業者,ソフトウェア開発事業者などの企業が連携する場として,2011年に設立された(設立時の参加企業は90社以上).現在のところ,コンソーシアムの活動は情報交換にとどまっているが,飲み会などの非公式の交流の機会などで得られるものも多いという.
写真2 新世代M2Mコンソーシアム 理事/東京エレクトロンデバイス 新事業推進部長の八幡 浩司氏
手にしているのは,厚さ0.17mmのLiイオン2次電池「THINERGY」(米国Infinite Power Solutions社製)と太陽電池,無線通信モジュールを組み合わせたカード型の装置.これでCR2032以上の電力を安定して出力することができるという.

八幡氏はM2Mの事例として,米国ネバダ州Las Vegasにあるホテル「Aria Hotel Resort and Casino」を挙げた.このホテルは,4,300室においてZigbeeセンサ・ネットワークを活用しており,宿泊客が室内のテレビ画面から希望する設定を選択するだけで,照明やエアコン,カーテン開閉などを自動制御できる(1).使用しているシステムは米国Control4社が開発したもの.
また,米国Viewdle社が開発した顔認識システムのデモンストレーション・ビデオを紹介した.このシステムは,動画に登場する人物の顔から個人を判別し,本人の名前やTwitter,Facebookにおける投稿内容を動画上に重ねて表示する.
八幡氏は,M2Mと関連が深いキーワードとしてビッグ・データを挙げた.既に,河川に関するセンサ・データなどは世の中にたくさん存在する.後は,だれがどうデータを見やすくするのか,またそのデータをどう分析するのかが重要であり,それらのデータを活用するのがM2Mだとした.
さらに八幡氏は,同社が開発にかかわっているM2Mシステム開発キット「MDK SHIBA」について紹介した(写真3).同キットは,Zigbeeで接続できるセンサ端末(温・湿度センサなど)とゲートウェイ機器(iNode),アプリケーション・ソフトウェアとデータベースが稼働するクラウド・サーバからなる.サーバは,同製品の提供元となるバレイキャンパスジャパンが管理する.利用者はJavaで記述したプログラムをサーバ上に配置することで,手軽にM2Mのシステムを試してみることができる.
写真3 M2Mシステム開発キット「MDK SHIBA」の基本構成

なお,既に米国IBM社や米国Hewlett-Packard社も,無線通信モジュールとマイコン,センサを組み合わせたワイヤレス・センサ・システムを開発・提供している.