レイアウト可変の電子雑誌からオンデマンド印刷,電子書籍の自販機まで,新市場創出を狙うシステムが続々 ―― 第16回 国際電子出版EXPO(eBooks)

北村 俊之

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レポート 2012年7月11日

 2012年7月4日~6日の3日間,東京ビッグサイト(東京都江東区)にて,電子出版ビジネスに関する展示会「第16回 国際電子出版EXPO(eBooks)」が開催された(写真1).大手印刷会社やコンテンツ制作/配信会社など,電子出版にかかわる主要企業のほか,海外からも有力企業が出展し,最新の技術やサービスを紹介した.またこれらの技術やサービスの導入を検討するため,出版社などのコンテンツを保有する企業やコンテンツ配信事業者などが来場した.東芝や富士通などのメーカが電子書籍リーダを展示する「電子書籍端末ゾーン」,電子書籍のコンテンツを展示する「コンテンツ ゾーン」および「デジタルコンテンツ ソリューション ゾーン」の三つの特設エリアが設けられ,来場者の関心を集めていた.

 

写真1 会場受付のようす

 

 

 主催は東京国際ブックフェア実行委員会/リード エグジビジョン ジャパン.同時開催は「第19回 東京国際ブックフェア(TIBF)」,「第2回 ライセンシング ジャパン」,「第1回 クリエイターEXPO東京」.

 

●インターネットやメール,音声読み上げに対応した電子書籍リーダを展示

 東芝は,読書の際の使いやすさに配慮した電子書籍リーダ「ブックプレイス(BookPlace)DB50」を展示した(写真2).例えば,どこの画面を表示していてもすぐにトップの書棚画面に戻れる「ホーム・ボタン」,読みかけのページを呼び出す「コンティニュー・ボタン」,一つ前のページに戻れる「バック・ボタン」など,電子書籍を読むときに有効な専用ボタンを搭載している.また文字の拡大や縮小,輝度調整などを指で操作でき,縦横の画面の切り替えも行える.さらに,音声合成技術を用いた音声読み上げの機能も備えている.アプリケーションとして,ブラウザ,メール,Adobe Reader,電卓,時計,カレンダ,ギャラリなどを搭載している.

 

写真2 東芝の「ブックプレイス(BookPlace)DB50」

 

 

 本電子書籍リーダは,画素数が600ドット×1024ドットの7インチ型タッチ・パネル付きカラー液晶ディスプレイを搭載する.CPUには米国Freescale Semiconductor社の「i.MX535」(動作周波数は1.0GHz)を,内蔵メモリには8GバイトのフラッシュROMを採用した.また,microSDカード・スロット,microUSBポート,スピーカ端子,ヘッドフォン端子などを備えている.OSはAndroid.バッテリ駆動時間は約7.5時間,本体の外形寸法は約190mm×120mm×11mm,重量は約330g.

 無線通信機能は,IEEE 802.11b/g/nの無線LAN,およびBluetooth 2.1+EDRに対応する.無線LANの通信環境があれば,「BookPlaceストア」から電子書籍の購入やインターネットへの接続が行える.現在,「BookPlaceストア」は約5万冊のコンテンツがそろっている.トッパン・グループのBookLiveとの協業により,今年度末には10万冊まで拡大する予定.

 

●電子コンテンツに文字や絵を書き込む

 富士通は,同社の個人向けタブレット端末「ARROWS Tab Wi-Fi」をベースとしたディジタル・ノート・システムを展示した(写真3).手書きで電子コンテンツ(PDFや画像)に文字や絵を書き込めるアプリケーションを用意した.コンテンツとは別レイヤに文字や絵を書き込み,オリジナルのコンテンツには手を加えない.コンテンツを複製することなく,複数のユーザが同時に書き込みを行える.

 

写真3 富士通のディジタル・ノート・システム

 

 

 コンテンツおよび個々の書き込みデータは,関連付け情報とともにクラウド・サーバ上に保管されており,いつでもどこでもコンテンツの参照・書き込みが行える.また,保管している関連付け情報により,複数の書き込みデータを重ねて表示することも可能.複数の書き込みの比較や,重ね合わせによる新たなコンテンツの作成が容易となる.書き込みについては,一つのコンテンツに対して互いに排他的な二つの書き込みレイヤを用意している.

 ベースとなるタブレット端末は,CPUとして「OMAP4430 Dual Core」(動作周波数は1.0GHz)を,内蔵メモリとして1GバイトのRAMと,16Gバイトまたは32GバイトのフラッシュROMを搭載する.また,画素数が1280ドット×800ドットの10.1インチ型タッチパネル付き液晶ディスプレイ(静電容量方式,10指マルチタッチに対応)と指紋センサも備えている.防水性能はIPX5/7相当.OSはAndroid 3.2を採用する.外形寸法は262mm×181mm×11.3mm,重量は599g.

 2012年5月より総務省「フューチャースクール推進事業」の一環として,和歌山県和歌山市教育委員会と共同で,和歌山市立城東中学校において本システムとクラウド環境を利用した実証実験を開始している.

 

●表示端末に合わせてコンテンツのレイアウトや表示方法が動的に変化

 ヤッパは,雑誌などの出版コンテンツを配信するための新システム「MAGA+」についてのデモンストレーションを行った(写真4).表示端末はiPhoneやiPadに対応する.本システムでは,個々の表示端末に合わせてコンテンツのレイアウトや表示方法が動的に変化し,読みやすい形でユーザに提供される.例えばスマートフォンのような小さな画面の場合,長文の記事を読みやすくするための工夫がなされている.一方,タブレット端末の場合は大きなディスプレイを生かしたレイアウトになる.iPhoneとiPadのコンテンツを,一つのソースとして管理できる.

 

写真4 ヤッパの「MAGA+」

 

 

 トップ・ページについては,目次を兼ねる記事の大きさや位置などを柔軟に編集できる「パネル型表示」を採用している.これにより,「特集記事は大きく表示」,「最新記事は画面上方へ配置」など,コンテンツの性格に合わせてレイアウトを指定することが可能.各パネルに割り当てる役割も編集でき,例えばバナー広告なども配置できる.

 本文記事ページでは,タブレット用およびスマートフォン用として14種類の表示方法が用意されている.また,行単位にブックマークする機能や誌面単位のサムネイル表示の機能を備えている.一度キャッシュに取り込まれたページは,オフライン環境でも閲覧できる.

 配信するコンテンツは,専用のオーサリング・ツール(Mac OSに対応)で作成する.EPUBやHTMLの知識がなくても,CMS(ブログ)感覚で直感的にコンテンツを作成でき,1冊当たり1~3時間程度で電子化できるという.コンテンツは,独自フォーマットおよびEPUB形式で管理する.現在,学研パブリッシング,ダイヤモンド社,東洋経済新報社,日経BP社などが採用を決めており,順次対応アプリが公開される予定.

 

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