基調講演はARM,IBM,IntelのCPU担当者が登壇,ソフト開発や3次元積層など,設計自動化の対象領域は拡大へ ―― 49th Design Automation Conference

松本 祐教

●低消費電力設計の焦点は上流のソフトウェア開発工程へ

 低消費電力化のための設計手法は,これまでのDACでもホットな話題の一つだった.現在は,プロセス技術,トランジスタ・レベルの回路技術,論理レベルの回路技術,マイクロアーキテクチャ,デバイス・アーキテクチャのそれぞれについて,ひと通りやれることをやりつくした段階にある.Near-Threshold Operation(トランジスタのしきい値電圧付近で動作させることで,エネルギー効率を引き上げられる.ただし絶対性能は下がる)がやや話題になっているものの,低消費電力化の話題は大きく上流設計へと移行している.

 特に,ソフトウェアによって消費電力を改善できる余地はまだまだある.例えば,"Lower Power to the People"というPavilion Panelに登壇した米国Texas Instruments社のClive Bittlestone氏は,"Hello World !"と画面に表示するプログラムを実行すると,メモリ・アクセス量が約4Kバイトもあることを指摘した.確かに,たかだか12バイトの文字を表示するのに,その300倍以上のメモリ・アクセスが発生するのは多すぎる.ソフトウェアによって消費電力を大幅に削減する余地がある,という意見にはうなずける.

 

●3次元半導体積層は異種半導体の統合で大きなメリット

 昨年に引き続き,今年のDACでも3次元半導体積層(スタック型マルチチップ・パッケージ)の話題がホットだった.6月7日の9時からスタートしたパネル・セッション"Is 3-D Ready for the Next Level ?"には,IBM社,Intel社,Cadence Design Systems社,Xilinx社,TSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Co. Ltd.)がパネリストとして参加した.メモリ・チップではすでに量産に入っており,「ヘテロジニアス・インテグレーション」(ロジック,メモリ,アナログといった異種半導体の統合)によるシステム再設計にこそ3次元半導体積層の大きなメリットがある,というのが大方の見方だった.

 TSV(Through Silicon Via;シリコン貫通電極)によるチップ間接続は,確かにI/Oの消費電力を削減するのに役立つし,I/O数の制約を取り払うことで高速化への期待も高い.しかし,従来のアーキテクチャのままチップを積層するだけでは,そのメリットは限定されてしまう.3次元半導体積層技術のメリットを追求するには,大幅なアーキテクチャの見直しが必要ではないか,という意見が支配的だった.例えば,チップ間インターコネクトを周波数の高いクロックで動かすと,シリアライズなどの処理によって信号変換のオーバヘッドが増える.チップ内のデータ幅でそのままチップ間I/Oを作るべき,すなわち従来のチップ間のパーティショニング(機能の分割)をいったん忘れ,チップ上の最適化と同様に,複数の異種チップを含めた全体最適化を進めるべき,との意見が多かった.

 3次元半導体積層はすでに利用可能な技術となってきているが,「誰がチップ単体のテストを行うのか」,「誰が積層するのか」,「誰が積層後のテストを行うのか」,「誰が熱の問題を考えるのか」など,役割分担について不明確な部分が少なくない.この問題に関係する会社の間でエコシステムの構築が不可欠,というのがパネラの共通認識だった.

 

●日本からジーダットやTOOL,NECが出展

 日本からは,2012年5月に就任したばかりの新社長 河内 一往 氏が率いるレイアウト設計ツールのジーダットが22年ぶりに出展し,海外進出への勢いをアピールしていた(写真4).

 

写真4 ジーダットのブース

 

 

 このほか,レイアウト・ビューワなどを製品化しているTOOLや,CベースのLSI設計環境「CyberWorkBench」を発売しているNECなどが展示会場にブースを構えていた(写真5写真6).

 

写真5 TOOLのブース

 

 

写真6 NEC(CyberWorkBench)のブース

 

 

 来年50周年を迎えるDACは,ソニー,東芝,IBM社によるCellプロセッサをはじめとして,さまざまなマイクロプロセッサが開発されてきたテキサス州Austinで,2013年6月2日~6日に開催される.

 

 

まつもと・ゆうこう
(株)トプスシステムズ 代表取締役社長

 

 

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