基調講演はARM,IBM,IntelのCPU担当者が登壇,ソフト開発や3次元積層など,設計自動化の対象領域は拡大へ ―― 49th Design Automation Conference

松本 祐教

 2012年6月3日(日)~7日(木),米国カリフォルニア州San FranciscoのMoscone Centerにて,電子設計自動化(EDA:Electronic Design Automation)に関する国際学会/展示会「49th Design Automation Conference(DAC) 」が開催された(写真1写真2).出展社数は206,参加者数は7,388名.会場がシリコンバレーから車で約1時間と近いこともあって,参加者数は昨年より1割程度増えた.

 

写真1 San FranciscoのMoscone Center

 

 

写真2 DAC会場の入口

 

●来年で50周年を迎えるDAC

 今年で49回目となるDAC.第1回は,何と1964年にニュージャージ州Atlantic Cityで開催された.シャープが世界初のオール・トランジスタ式電卓を発売した年である.嶋正利博士による世界初のマイクロプロセッサ「i4004」が開発された1971年の7年も前である.いったいその時代に設計の自動化について何が行われていたのか.そもそも手書きの回路図を使って回路を設計し,紙を切り貼りしてレイアウト・パターン設計を行っていた時代である.

 DAC初日の6月3日にはチュートリアル(セミナ)が行われた.

 展示会(Exhibition)は6月4日からオープンする.この日の9時15分から,EDAアナリストであるGary Smith氏による講演「Trend and What's Hot at DAC」が行われた(写真3).これは恒例の講演で,立ち見が出るほどの盛況ぶりだった.同氏が考える「What to see at DAC 2012」には27社がリストアップされていた.その中にはアプリケーション・プラットホームとして米国Synopsys社,熱解析として米国ANSYS/Apache Design社,シリコン・バーチャル・プロトタイプとして韓国Entasys Design社,米国Xilinx社,米国Atrenta社の3社,ソフトウェア・バーチャル・プロトタイプとしてオーストラリアVWorks社,メニー・コア・エンベデッド・ツールとして英国ARM社と米国Mentor Graphics社の2社,そして日本から22年ぶりに出展したICカスタム・レイアウトのジーダットなどの名前が挙がっていた.

 

写真3 Gary Smith氏による講演の様子

 

 

●ARM1とCortex-M0を比較してLSI設計の進化を俯瞰

 DACの基調講演は3セッションあり,6月5日~7日の3日間,1日に付き一つずつ行われた.


 6月5日に行われた一つ目のキーノート(基調講演)では,ARM社の創設者の1人でありCTO(Chief Technical Officer)であるMike Muller氏が"General Session/Awards and Scaling for 2020 Solutions"というテーマで講演した.同氏らが1985年に設計した32ビットRISCプロセッサ「ARM1」の設計と最近リリースした「ARM Cortex-M0」の設計を比較し,この26年間で何が変わったのかを示した.

 ARM1のプロセス技術は3μmで回路規模は6000ゲート,その設計には6人年を要したという.これに対して,Cortex-M0は20nm技術で8000ゲート,設計工数は11人年とそれほど変わらない.設計チームの規模もほぼ同じ.大きく変わったのはレイアウト設計にかかった期間で,ARM1の9カ月に対して,Cortex-M0はたったの32分.「フルカスタム設計からRTL(Register Transfer Level)への移行により本当に変わった」(Muller氏)という.

 また,1985~2011年の26年間は13プロセス世代に相当し,その結果,Cortex-M0の面積はARM1の1万分の1になった.この結果は,ほぼムーアの法則に従っている.一方,性能(動作クロック周波数)については2プロセス世代ごとに2倍なので,ARM1に対してCortex-M0は64倍となるべきところが,実際にはARM1の12.5MHzに対してCortex-M0は200MHzと約16倍にしかなっていない.さらに,スケーリング則に従えば,ARM1の5Vに対してCortex-M0は8mVとなるところが,実際には950mVであった.Muller氏がR&Dチームにその理由を問い正したところ,「スケーリングしなかったのはしきい値電圧に問題があったためであり,それはリーク電力に原因がある.しきい値電圧が(期待したほど)下がらなかった」という.そのために性能向上が遅れているようだ.

 もう一つの比較項目は検証期間である.ARM1では2000CPU時間で検証したのに対し,Cortex-M0では1.5MCPU時間と大幅に増加した.これは制約付きランダム・テスト生成に起因しているという.今日では,シミュレーション・サイクルはシリコンのリスピン(製造し直し)よりも安いとの理解が進んでいるためと考えられるが,その一方で「果たしてCPU時間は有効に使われているのかについては疑問もある」(Muller氏)とした.

 また同氏は,EDAコミュニティに対して,「設計者が一度設計したら,ボタンを押して,リコンパイルして,思った通りの結果になっているかどうかが分かる」フォーマル設計への期待を示した.

 

組み込みキャッチアップ

お知らせ 一覧を見る

電子書籍の最新刊! FPGAマガジン No.12『ARMコアFPGA×Linux初体験』好評発売中

FPGAマガジン No.11『性能UP! アルゴリズム×手仕上げHDL』好評発売中! PDF版もあります

PICK UP用語

EV(電気自動車)

関連記事

EnOcean

関連記事

Android

関連記事

ニュース 一覧を見る
Tech Villageブログ

渡辺のぼるのロボコン・プロモータ日記

2年ぶりのブログ更新w

2016年10月 9日

Hamana Project

Hamana-8最終打ち上げ報告(その2)

2012年6月26日