LED照明の次を狙う『有機EL照明』の製品化が始まった ―― 第4回次世代照明技術展
次世代照明の製品と技術に関する展示会「第4回 次世代照明技術展」が1月18日~20日に東京ビッグサイト(東京都江東区)の西館1階で開催された(写真1).主催はリード エグジビション ジャパン.
「次世代照明」の主役として完全に定着したのは,LED(Light Emitting Diode)を光源とする「LED照明」だろう.5年前には次世代照明の本命として価格の低下と普及が期待されていたLED照明だが,現在では価格も下がり,本格的な普及期を迎えつつある.新しく設置する照明は特別な場合を除くと,大半がLED照明となり,既存の照明器具でもLED照明への代替が進んでいる.本展示会でも展示物のほとんどが,さまざまなLED照明で埋めつくされていた.
●面光源の有機EL照明に注目
それではLED照明には弱点はないのか,といえば,そんなことはない.光源を形状で分類すると,点状の光源(点光源),線状の光源(線光源),面状の光源(面光源)に分かれる.電球とLEDは点光源,蛍光灯は線光源である.LEDは点光源であるため,一般的な照明用途では「眩しい」という問題を抱える.自動車のフロントライトや投光器などの照射用光源としては適しているが,LED電球やLED蛍光灯などの一般照明器具では眩しさを抑えるための部材を付加することが少なくない.
点光源は通常,360度すべての方向に照射する光源を意味するのだが,LEDは点光源としても弱点がある.それは照射角が最大でも180度にとどまることだ(実際はもっと狭い).光を照射する表側と,光を照射しない裏側が存在する.これは照明器具を設計するときに制約条件となる.
そこでLED照明を補完する次世代照明として注目を浴びているのが,「有機EL照明」である(写真2).有機ELは面状のパネル全体が発光する,いわゆる面光源である.このため,眩しくない.そしてパネルの形に制約がない.正方形のパネルや楕円形のパネルなどはもちろんのこと,折り曲げることもできる.照明器具を設計するときの自由度が大きい.
ただし現在の有機ELは発光効率があまり高くない.このため,明るさを要求する照明には適さない.また単位面積当たりの明るさ(輝度)を高めると,発光寿命が短くなってしまうという問題がある.
それでもここ1年ほどの間に,研究開発段階から製品段階へと照明用有機ELパネルは移行し始めた.次世代照明展でも,いくつかの企業が照明用有機ELパネルや有機EL照明などを展示していた.
●燐光材料を使った高効率有機EL照明
コニカミノルタは2011年10月に,照明用有機ELパネルのキットを販売すると発表した.発表日である10月3日に販売を始めたキット「Symfos OLED-010K」は4枚の有機ELパネルと専用駆動ユニット(専用ドライバ・ボックス),AC電源ケーブルで構成されている.価格は15万円(税別)と高価だが,手軽に照明用有機ELパネルを試せる.なお「Symfos(シンフォス)」とは,同社が有機EL照明を含む次世代照明製品に対して命名したブランドである.
本展示会でコニカミノルタは,上述の有機ELパネルのキット「Symfos OLED-010K」の実物を展示し,来場者がキットを見て触れられる状態で展示していた(写真3).有機ELパネルの外形寸法は74mm×74mm×1.8mm,輝度は1,000カンデラ/m2,発光効率は45ルーメン/W,駆動電圧は3.6V,定格電流は71.5mA,寿命(輝度が初期の半分に減衰する時間で定義)は8,000時間である(写真4,写真5).蛍光灯とほぼ同じくらいの寿命がある.
有機EL技術としての特徴は,有機EL材料として一般的な蛍光材料ではなく,燐光(りんこう)材料を使ったこと.燐光材料は,理論的には蛍光材料よりも発光効率が高い.このため非常に明るい照明パネルを原理的には実現できる.