片山 右京のEVカートは飛ぶように走り抜けた! しかし,トップは... の巻 ―― 第17回 日本EVフェスティバル2011 (2)
●片山 右京のドライビングで考えたこと
EVのカートは,速度が出るとは聞いていたが,実際の走りを見て驚いた.小さいモータでも加速がよい.エンジンと違って回転数が出なくてもモータは高いトルクを得ることできる.理屈は分かっているが,スゴイ.それにしても,シートベルトのないレーシング・カートでそんなに速度を出して大丈夫なのだろうか.命知らずの高速ドライビングだ,と呟いてたら,近くにいたジャーナリストが,プロだからこそ本当に危険なことは避けるものだよ,といわれた.確かにプロのレーサは,自分自身がマシンを完全に制御できる範囲でしかドライビングを行わないのだろう.どうマシンが反応するかを確かめながら,アクセルとブレーキを踏んでいるのだろう.EVは,制御系として見た場合,エンジン車よりも反応速度が1けたほど速いという.だから右京のドライビングに対応できたのだろうか.
閑話休題.さて,この競技は「ERK30分耐久チャレンジ」なので,もともとスピード・レースではない(ここでは便宜上,レースと記することもある).片山 右京の走りで,速度に気を取られてしまったが,競技はあと20分以上残っている.各カートが周回を重ねていくうちに,ピットにいつ入るのか,どこで交代するのか,周回を増やすためにどのようなドライビングをすればいいのか,など,耐久競技の本質が見えてくるようになる.ばんばん飛ばしていても,途中の20分でバッテリ切れを起こすと上位に入れない.空気抵抗も速度の2乗に比例するし,タイヤの転がり抵抗の影響も重要だ.それらを勘案しながらドライビングするのが,この競技の面白いところなのだろう.
●どこがトップになるのか?
場内放送では,その時その時の周回数が発表される.ただし,レギュレーションに従って,足し算や引き算をするので,どこのチームが1番かを正確に知ることは難しい.つまり,リアルタイムでは暫定順位でしか分からない.暫定順位は電光掲示板に表示されている.20分を経過したころから,順位の変動が大きくなってきた.リタイアするカートが出てくることと,ピットインの回数を消化をするため,電池の残量を見ながらピットイン時間を調整するためだろうと思われる.
ふと気付くと63番の横浜ゴム有志チームの順位が落ちてきている.ピットインの回数が増え,その滞在時間を長くとっているのだ.代わって,45番のカートが台頭してきた.順位が徐々に上がっている.ドライバが女性・男性に関係なく,走りがすばらしい.作戦も功を奏したのか,それまで上位だったカートがピット調整を行っているうちに,いつのまにか2位に上がってきた.その走りに見とれていると,このチームは数カ月前に行われたERKのレースで優勝した,という情報が入ってきた.にわか仕込みではなく,きちんとした訓練を受けていて,基本の走りができているのだ,という.
場内放送では,現在1位のカートはピットインをどこかで行わないと5回以上の規定に反することになる,と解説している.会場がどよめいた.まもなく,トップを走っていたカートがピットインし,どうやら45番のカートが暫定だが1位にいるらしい.
スタートから30分がたち,チェッカ・フラグが振られた.競技は終わった(写真5).
写真5 意気揚々と45番のカートがピットに戻ってきた
レギュレーションからどのカートが1番か,最終的にはまだ不明だ.クラスも三つに分かれているし,温暖化問題の解答がどうかも発表されていないし....
掲示板には45番が最上位にあった(写真6).
写真6 トップの位置に45番とある
(第3回に続く)
まの・もとき