うちのオフィスの節電が楽しい理由 ―― 手軽なゲーム感覚で「見える化」と「制御」を扱う

小清水 良多

●ゲーム感覚で節電,報奨金あり

 単純に「見える化」しただけでは節電を続けるのは難しい,という話をよく聞きます.始めこそ面白がってもらえるものの,継続するのは難しいというのが現状のようです.また,消費電力を見える化できるハードウェアを実証試験で無償配布して1年間試してもらったところ,1年後のハードウェア回収時に,3分の2は未開封のまま返却されたそうです.このような情報もあったので,節電プロジェクトを社内で行うためには,見える化だけではなく,ある程度自動で制御や節電をやってくれるような便利なもの,もしくは楽しくできて,かつ継続して行えるようなものを作る必要があると考えました.

 ここでまず出てきたアイデアは,1人1人が操作できるようにするというものでした.社員全員がソフトウェアに精通しているわけではないので,作り込まれたプログラムは必要ありません.興味を引くようなユーザ・インターフェースの作成を心がけ,インストール作業が必要なく,Web上からでも簡単に操作できるプログラムにしました.

 次に,仲間の競争意識を高めれば継続して節電に取り組んでくれるのではないかと考えました.筆者のオフィスはビルの8階と9階にあるのですが,電気の配電の区画が8階だと三つに分かれています(配電盤が三つあるイメージ).このフロアを区画ごとに三つのグループに分け,それぞれの節電率や節電状況を表示できるようにしました.節電状況を,15%の節電を達成しているなら緑色,10~15%の節電なら黄(オレンジ)色,10%以下しか節電できていない場合は赤色で表示し,状況が分かりやすいようにしました(図3).

 

図3 区画ごとにグループ分けして節電状況を表示

 

 また,プログラムでは去年の同月との電気料金と比較した節電率を表示しているのですが,節電率を区画ごとに毎日比較して,一番節電率が高かった区画に1ポイントを付与し,期末には最もポイントが高かった区画に対して節電分のインセンティブを還元するようにします.また,節電を面白くするためのアイデアは今後も募集しており,システムにどんどん反映させる予定です.

●導入してみてどうだったか

 実は,このオフィスの節電を行う前から,管理会社より「節電のご協力をお願いします」と言われていました.それを受けて,人事・総務部から「電気はこまめに消しましょう」,「誰もいない場所の電気は消しましょう」,「冷房の設定温度は下げないようにしましょう」と,メールなどで節電を促されてはいたのですが,日頃から節電を意識している社員を除けば,特に大きな変化はなかったという印象がありました.

 このシステムを作成するときには,まず見える化だけを始めたのですが,オフィスの間取り図がパソコンのソフトウェア画面上に貼ってあるのを見て,同僚たちが筆者の机に「何をやっているの?」と寄ってきました.「オフィスの節電を始めようと思って」と説明すると,中には興味津々で「何か手伝えることはありますか?」と聞いてくる社員もいました.

 それから,オフィスの電気を各自の机から消灯できるようにするために,工事会社にリレーの接点を取り付けてもらい,テストを行いました.テスト段階では,作成したプログラムが複数個所で実行されると照明が3秒おきぐらいに点滅してしまうという問題が発生しました.テストを行ったのが就業時間中だったこともあり,まるでポルターガイスト現象のようになったオフィスの中を,社員の冷たい視線を受けながら席を回り,謝罪しつつプログラムを作成したことが今でも鮮明に記憶に残っています.

 ほかの社員の協力もあってプログラムは無事完成したわけですが,試してもらったところ,各自の机から照明のOn/Offができるので,特にエンジニアではない社員も率先して節電を行ってくれるようになりました(写真3).また,最も効果が現れたと感じているのは就業時間後の消灯です.プロジェクト始動前はフロアの電気はつけっぱなしで,社員が最後の1人になっていても全体の電気がこうこうと点灯していたのですが,プロジェクト開始後からは使ってない部分の電気が積極的に消灯されるようになり,かなり節電になりました.人事・総務部に確認したところ,実際に8月の照明とコンセントの電力使用料金は7月に比べて22.8%削減できたという報告を受けました.

 

写真3 実際に社員がデスクから節電を行っている様子(独自のアプリケーションを作成して楽しんでいるエンジニア)

 

 今回,節電プロジェクトを導入したのは8階だけだったのですが,今後は営業部が入っている9階でも節電プロジェクトを検討しています.8階で導入したポイント制やグループ対抗というアイデアが好評だったので,これらは9階にも取り入れたいと思っています.こちらは配電盤による区分ではなく,営業グループごとに区分を分けて営業部の実績に基づいた節電を行う,つまり営業実績と電力使用量のグラフ化を行い,「見える化」を行うことを検討しています.極端な話ですが,あまり売上を上げていないのに,すごく電力を使っている場合などには,アラームを出したりするというアイデアもあります.

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