うちのオフィスの節電が楽しい理由 ―― 手軽なゲーム感覚で「見える化」と「制御」を扱う

小清水 良多

 "見える化し 楽な仕組みで 節電だ♪"―― 流行りの川柳を一句詠んでみました.

 この夏は,東日本大震災後の電力不足により,15%の節電目標が義務付けられている企業はもちろんのこと,多くの企業や家庭で節電意識が高まりました.筆者の所属する企業(日本ナショナルインスツルメンツ)でも節電に取り組むべく,自社のハードウェア(コントローラ)とソフトウェア(LabVIEW)を使って,消費電力を見える化して節電につなげるシステムを作成しました.

 システムを作るにあたっては,単に節電に「取り組む」だけでなく,みんなで節電を「楽しめる」ための仕組みを考えてみることにしました.楽しく節電するためのアイデアを社内から募り,その仕組みを作ってみました.ここでは,その節電システムの内容と,実際に運用してみてどうだったのかを紹介します.

●自席からフロアの照明をOn/Off,節電状況も一目で確認

 今回作成した節電システムは,機能的に分類すると「見える化」と「制御」の二つで構成されています.

 まずは「見える化」の部分です.市販のクランプ・センサをオフィスの配電盤に取り付けて,電力を計測します(写真1).計測する電力は,照明用,各個人の机に引かれているコンセント用,エアコン(室内機)用の3種類です.

 

写真1 配電盤に市販のクランプ・センサを取り付けた様子

 

 また,社員がネットワーク上から遠隔でモニタできるように,無人運転が可能な制御・監視システム「NI CompactRIO」を配電盤に設置しました(写真2).これに,見える化のためのハードウェアとして,クランプ・センサからの値を集録するためのアナログ入力用モジュールを追加しました.また,各社員がネットワーク上から照明をOn/Offできるように,「制御」のためのハードウェアとして,ディジタル出力モジュールを追加しました.

 

写真2 節電システムのハードウェア(赤枠の部分)
赤枠内の一番左側にあるのが,制御用のコントローラ(NI CompactRIO)である.ほかにアナログ入力モジュールとディジタル出力モジュールを入れ,システムとして設置した.なお,この製品はモジュール式なので,今後オフィスの温度を集録したいとなった場合も,温度集録用のモジュールを追加するだけでシステムを拡張できる.

 

 「見える化」と「制御」のソフトウェア部分は,自社ソフトウェアのLabVIEW注1を用いて開発しました.作成したプログラムのユーザ・インターフェースを図1に示します.画面右側のノブ・スイッチで,モニタリング・モード(見える化)と照明切り替えモード(制御)を切り替えることができます.また,画面下側に表示されているのは,現在の電力量,電気料金,節電率などです.ユーザ・インターフェースは直感的で分かりやすいものにするよう心がけました.

注1:LabVIEWとは,ナショナルインスツルメンツが提供する,計測/テスト/制御システムの開発に使用されているグラフィカルプログラミング環境である.テキスト行ではなくドラッグアンドドロップ式のグラフィカル関数ブロックでプログラミングでき,直感的なフローチャート表現によりコードの開発や管理,解釈が簡単に行える.

 

図1 LabVIEWで開発したユーザインタフェース
R+数字が入っている照明については,実際に各社員のデスクからOn/Offの制御ができる.

 

 また,LabVIEWがインストールされていない環境でも,モニタリングや制御(照明のOn/Off)ができるようなWebアプリケーションを併せて作成しました.方法は2通りあります.一つは,LabVIEWで作成したプログラムをそのまま遠隔からも実行できる「Web Publish Tool」を使う方法です.もう一つは,Webブラウザからクラウド上でアプリケーションを開発できる「Web UI Builder」を使う方法です.どちらも,ソフトウェアをインストールする必要がなく,誰でも簡単に利用できます.

 電力データや照明の点灯状況はWebサービス経由で送られているので,Web UI Builderを使う場合,データ収集を行っているコントローラのIPアドレスを入力するとデータを取得して確認できるようになっています.あらかじめ作成したプログラムがあるので,すぐに各自のWebブラウザ上から監視制御することが可能です.

 今回,2種類のWebアプリケーションを作成した理由は,出来合いのものを実行したいユーザと,カスタマイズしたいユーザがいたからです.社員にはエンジニアも多いので,実際に自分でカスタマイズしてみたいという意見もありました.そのため,電力データと照明点灯状況などの基盤はあらかじめ共有できるように作成しておき,後のデータの処理の仕方やユーザ・インターフェースの部分,電力の計算など,個人で好きなようにカスタマイズできる手段も用意しました.

 アイデアをまとめたり,工事を行ったりするのにはある程度の時間がかかりましたが,プログラム自体は,LabIVEWを用いたことで1,2日という短期間で作成できました(図2).

 

図2 LabVIEWで開発した今回の節電システムのプログラム

 

 

 

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